○牛尾座長 では、ただいまから「コンテンツ専門調査会デジタルコンテンツ・ワーキンググループ」を開催したいと思います。
私はコンテンツ専門調査会の会長を務めております牛尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
皆様におかれましては、非常にお忙しい中コンテンツ専門調査会の委員就任並びに本ワーキンググループへの参加の御快諾をちょうだいしまして誠にありがとうございました。今回は、委員の初顔合わせの会合でもございますので、最初に委員の方々を事務局から御紹介させていただきます。
○荒井局長 事務局の荒井でございます。
お手元の資料1に沿いまして、御説明させていただきます。
荒川委員でございますが、交通渋滞のため、間もなく到着されます。
小川委員は、本日御欠席でございます。
金丸委員でございます。
久保利委員でございます。
國領委員でございます。
浜野委員でございます。
平澤委員でございます。
また、オブザーバーとして御参加いただく知的財産戦略本部の角川本部員でございます。 中山本部員でございます。
以上です。
○牛尾座長 それでは、議事に入らさせていただきます。
まず最初にデジタルコンテンツ・ワーキンググループの開催につきまして、資料に基づきまして、事務局から説明をお願いしたいと思います。
○荒井局長 資料2に沿いまして、御説明いたします。
本ワーキンググループの開催の趣旨は、1にございますとおりで、コンテンツ分野におけるいろいろな動きに対応していくということでございます。
「調査事項」は2にございますように「デジタルコンテンツの振興について」御審議いただくためコンテンツ専門調査会会長の決定により開催されるものでございます。
本ワーキンググループのメンバーにつきましては、ただいま御紹介した資料1のとおりでございます。
続きまして、資料3に沿いまして御説明させていただきます。
資料3は、このワーキンググループの検討スケジュールでございます。第1回は本日でございまして「デジタルコンテンツをめぐる動向と課題について」でございます。
第2回は12月1日、第3回は12月26日を予定してございますが、そこにおいては、引き続き政策について御検討いただくということでございまして、来年1月の第4回にはとりまとめをお願いしたいと思っております。
なお、検討に際しましては、必要に応じ参考人からの意見聴取を行ってまいりたいと考えております。
以上でございます。
続きまして2番目の議題の関係で、資料4に沿いまして御説明いたします。資料4−1をご覧いただきたいと思います。
1枚めくっていただきました2ページ目に「世界のコンテンツ市場の動向」がございまして、現在コンテンツ市場の主役はアメリカでございまして、GDP比で見ても、日本はまだコンテンツ大国とはいえない状況でございます。
3ページは「世界のコンテンツ市場の見通し」でございます。グラフの一番上をご覧いただくとわかるように、世界のコンテンツ市場は今後大きな成長が見込まれているため、日本国内だけでなく、世界を見据えた海外展開が不可欠と考えております。
4ページ目は参考でございますが、デジタルコンテンツとはどのようなものを指すか、その例をいろいろ書いてございますが、デジタルコンテンツだけでなく、関連周辺機器等にございますように、全体としては非常に大きな市場となっております。
5ページ目は、コンテンツ市場全体をめぐる動向でございますが、コンテンツ市場全体の成長率と比べても、デジタルコンテンツの市場は大きく伸びており、市場全体の成長を牽引しております。このため、コンテンツ市場全体の底上げを図るためには、デジタルコンテンツの一層の成長が不可欠となっております。
6ページ目は、デジタルコンテンツの市場規模の予測でございます。デジタルコンテンツ市場は、今後大きな伸びが予測されております。
7ページ目は、デジタルコンテンツをめぐる動きでございます。まず「放送と通信の融合」「インターネットでのコンテンツ配信の活発化」についてでございまして、8ページには更に携帯端末を利用したコンテンツ流通が開始されていること、著作権をめぐるいろいろいな動きについて書いてございます。
以上が資料4−1でございます。
続きまして、資料4−2を御説明させていただきます。
1ページ目に「基本目標」として「日本を世界トップクラスのデジタルコンテンツ大国にする」ということを掲げてございまして、その目標としてはユーザー大国、クリエーター大国、ビジネス大国を目指すということを考えてはどうかということでございます。
更に「視点」としては「1.ユーザーが主役である」「2.クリエーターを大切にする」「3.技術は日進月歩する」「4.デジタルに国境はない」「5.ビジネスモデルは進化する」という視点を掲げてございます。
2ページ目は「目標1:ユーザー大国に向けた課題」として3つ掲げてございまして「1.インターネット等を通じたコンテンツ配信を促進する」「2.ブロードバンドを利用した放送(IPマルチキャスト放送)によるデジタルコンテンツの供給を拡大する」「3.ユーザーの視点からバランスのとれたプロテクションシステムの採用を促進する」ということを掲げてございます。
3ページ目は「目標2:クリエーター大国に向けた課題」でございまして「1.クリエーターの能力が発揮できるシステムを作る」「2.クリエーターが適正なリターンを得られる仕組みを作る」「3.人材育成を促進する」を掲げてございます。
4ページ目は「目標3:ビジネス大国に向けた課題」でございまして「1.コンテンツ関連ビジネスにおいて国際標準をリードするための取組を強化する」「2.著作権に関する課題を解決する」「3.コンテンツビジネスの国際展開を図る」。このような内容となっております。
説明は以上でございます。
○牛尾座長 では、これから委員の御発言に移るわけでありますが、委員の皆様からできるだけ多くの発言を何回もしていただきたいと思いますので、大体1回3分ぐらいの感じで御発言を願えればありがたいと思います。
本日は初回でございますので、初めに出席委員の皆様全員から、やはり1人3分ぐらいを目安に御意見をちょうだいしていくわけでありますが、一番最初にコンテンツ専門調査会委員として、前回の報告であるコンテンツビジネス振興政策のとりまとめに御尽力をちょうだいしました浜野委員からリードオフをしてもらいます。
なお、本日途中退席されるオブザーバーの角川本部員には、浜野委員の後で御発言をちょうだいしたいと思います。
では、初めに浜野委員お願いします。
○浜野委員 資料5−4にメモに沿ってお話をいたしたいと思います。
角川会長がゼネラルプロデューサーをやっていらっしゃいます東京国際映画祭の今年のオープニング上映は、中国のチャンイーモウ監督の映画「単騎、千里を走る」でした。監督は舞台挨拶で、次のように話されました。文化大革命の後に中国で「君よ憤怒の河を渉れ」という日本映画が公開され、10億人が見た、要するに歩ける人は全員見たということで、主役の高倉健は観客のみならず、中国映画界にも大きな影響を与え、高倉健のイメージを中国の男優が脱却するまでに、10年かかった。このようにコンテンツの影響の大きさについて語られ、コンテンツがいかに重要かということを再認識した次第です。
コンテンツは、そのように文化資源であり、経済資源であり、観光資源であることは言うまでもありませんが、外交資源でもあるという、さまざまな観点からコンテンツは大事なので、そういった論点を踏まえた上で、議論していただきたい。
日本ではコンテンツの主要な消費者である若年人口が減る一方なので、新しい表現とか、技術開発とか、新しい公開方法とか、さまざまな試みを行わない限り、国内コンテンツマーケットは縮小していくと考えられます。新しい試みには、それを支援する統計データとか研究開発が必要ですし、国内以外のマーケット、つまり海外マーケットが一層重要になってきます。
資料5−4に録音音楽の海賊版率のデータを掲載していますが、海賊版に対する対応策をとって、正当なリターンを確保すれば、それだけでも売上が上がるので、海賊版対策はとても重要です。海賊版と関連で、緊急に対応する事件が起こっています。例えば「MANGA」という言葉とか「クレヨンしんちゃん」という言葉が海外で商標登録で押さえられてしまうという事件です。「MANGA」については日本の漫画家が動きを起こしたので、商標登録をとった会社が自由に使っていいということを表明したものの、日本の代表的表現である「MANGA」という言葉が私物化されていることには違いはありません。漫画やアニメーションが中国で一度も正規に発売も上映もされていない「クレヨンシしんちゃん」が、中国の会社に登録商標されてしまい、日本から正規にライセンスした商品が中国では海賊版とされ、撤去命令を受けるという奇妙な事態が起こっています。今後国際マーケットがシームレスになっていけばいくほど、こういった問題が続発すると思いますので、一私企業が、外国のルールと闘っていくのは難しのいで、安心してビジネスができる国際ルールをつくる努力を早急にしていただきたい。
インターネットは、やはりユーザーの立場から見るとまだフロンティアの段階で、ピストルを持っていないと怖くて立っていられないという状況です。メディアとしてのインターネットの成長は急で、放送との融合も視野に入っているのなら、フロンティアではなくて、やはり安全なメディアとしていかなければなりません。
コンテンツはデジタルによって、二次利用、三次利用と、さまざまな利用ができるようになるわけですが、これまで日本では、一人の著作者が利用に対して「ノー」と言うと、使えない状況になっていました。アメリカには、議会が決めた一定の料金さえ払えば、誰でもレコーディングができる強制許諾制度という法律があるそうです。これなどを参考にして、もう少し流通とか利用に簡便な制度が日本にも必要ではないかと思っております。
あとは、先ほどの御説明と同じように、汗をかいてリスクを背負ってコンテンツをつくる人が報いられる制度が望ましいと思います。今の業界では、「つくらないことが儲ける秘訣だ」と必ず言われる。私も授業でそう教えざるを得ないのですが、やはりリスクを背負ってつくる人が報いられる形をとらないと、本格的な国際競争にされると、じり貧になるでしょう。
いつも繰り返し述べていますが、漫画とかアニメーションといった日本の表現方法で表現したいと思っているクリエーターが世界中にいっぱいいるのですが、日本のコンテンツ業界で働こうとしたり、弟子入りをしたいと思うとビザの関係で入国できない。フランスが文化大国と言われる所以の一つは、クリエーターの積極的受け入れにあるので、海外からの人材を積極的に受け入れる環境づくりをしていただきたいと思います。
最後に、日本ではコンテンツに関するさまざまなイベントが散発的に行われていますが、外国から何度も来日するのは難しいので、できれば東京国際映画祭などの国際的なイベントのノウハウを蓄積したものを核にして、さまざまなコンテンツを集約して情報発信できる巨大な仕組みのイベントに改変できないかなと思っております。
以上です。
○牛尾座長 それは映画以外ということですか。
○浜野委員 いや、映画も含めて、アニメーションもゲームも一緒にしていただくといいかと思います。
○牛尾座長 わかりました。
では、続きまして角川本部員お願いします。
○角川本部員 今の浜野委員のお言葉の発展を2つ申し上げたいと思います。
今、浜野委員がおっしゃったとおり、映画祭は映画産業の振興だけではなくて、アニメマーケット、ゲームソフトマーケットが一体となった「コンテンツの総合映画祭」というのがあっていいのではないかと思います。
○牛尾座長 そうですね。ヨーロッパは、だんだんそういうふうになってきていますね。○角川本部員 大きなスケールにすることによって、海外の人たちが1回の訪日で多様な日本のコンテンツに触れるように、映画だけではなくて、アニメにもゲームソフトにも触れるような環境をつくってあげるということが重要だと思います。
○牛尾座長 角川さんに任せておけば、そうなるということですね。
○角川本部員 それは、私だけではとても手が負えなくなってきますので、是非各々のプレイヤーの皆さんにお願いしたいと思います。
もう一つは、浜野委員がおっしゃった商標権のトラブルの問題です。これは私がバンダイから聞いたことがあるんですけれども、ガンダムという商標登録を韓国でしようと思ったら、ガンダムというのはロボットの普通名称だからだめだということで拒否されたと。結局、最後は登録されましたが。エヴァンゲリオンは、まだそのころは普遍的なヒットになっていませんでしたので、問題なく商標登録ができたという話を聞いています。
そういう点では、今、浜野委員がおっしゃったとおり、やはり1企業の力ではなかなか商標登録の闘争ができなくなってきていると思います。今、コンテンツジャパンということで「CJマーク」を付けて、商標権によって海賊版の取り締まりをしようとする動きが始まっております。それを管轄しているコンテンツ海外流通促進機構(CODA)という組織があります。CODAを活用することによって、商標権の登録の紛争を解決することができないかどうかを検討してみる価値はあるかなと思います。今の委員のおっしゃったことを発展させるということです。
○牛尾座長 今、日本語の本物が海賊版になったという話がありましたね。それはどういうことですか。
○浜野委員 中国では、クレヨンしんちゃんは、双葉社という正規のライセンスを持っているところがライセンスイングした商品は海賊版ということになっているんです。
○牛尾座長 偽物の方が本物なんですか。
○浜野委員 本物なんです。
○角川本部員 商標を先に登録すればということですね。
○牛尾座長 久保利さん、そういうことは簡単にできるんですか。
○久保利委員 できるでしょうね。本来だったらば、それは会社の方がみんな準備をしなければいけないんです。
例えば、ゼロックスという言葉が複製として使われることに対して、ゼロックス社は真剣に考えていて、コピーする意味で「ゼロックス」を使うなと主張しました。リコーも「リコピー」について同様でした。
そういう意味でいうと、ガンダムがロボットの普通名称だと言われてしまうような使われ方をもし韓国でしているのならば、それは相当事前にケアをして、警告をしていかなければいけなかったのかもしれない。そういう知財的な配慮というのは、実は日本の企業、個別企業を含めて全くなかった。国家戦略としてもなかったということの露呈が今の問題として出てきているということではないのでしょうか。
○牛尾座長 そういったものではホンダが二輪車になっているね。そういうのは会社の方がうれしがっていないで。
○久保利委員 ビジネス的にはそうです。
○角川本部員 ただ、コンテンツの場合には、例えばホンダだとか、そういうものは二輪車の輸入を禁止されていないわけですね。ですから、ホンダという名前になったかどうかについては企業が対応できるんですけれども、コンテンツ、特に映画の場合には、つい最近まで先方の国が輸入を禁止していたわけです。日本文化の流入は日本の侵略であるみたいな、そういう太平洋戦争の後遺症が昨日まで残っておりました。それがなくなってきたのは1990年代になってようやくです。そういう点では、一企業がそれに対して対応できる環境になかったと言っていいのだと思います。
○牛尾座長 その場合、業界とか。
○角川本部員 これから始めるしかないんだ、ということだろうと思います。今まで努力ができなかったと。
○牛尾座長 認識をしないといけないと。わかりました。
○角川本部員 それから、私から申し上げたいのは、デジタルコンテンツというものの振興のためには、デジタルコンテンツのビジネススキームというものをつくらないとデジタルコンテンツがビジネスにならないというか、つくる人が商売できないということの危険性を常にはらんでいるということです。
携帯電話でのビジネスの優れたところは、先行したドコモがビジネススキームをつくったところにあるわけです。つまり、課金、集金、それからコンテンツの提供という形でコンテンツポータルをつくることによって、iモードの中でビジネススキームが完結していたということです。
それによって、今日、出席されているフェイスという存在も立ち上がってきたのだと思いますけれども、そういうビジネススキームが壊れてしまうと、つまりデジタルコンテンツがそれを壊してしまうと、どこで収入を上げていいかわからないということが問題になってくると思います。
例えば、CDの場合、iPodが、今、非常に脚光を浴びておりますけれども、それによってアメリカなども非常に本来のレコードが売れなくなってしまって、タワーレコードが倒産の憂き目に遭っていると。
○牛尾座長 CDそのものの売上は断然減っていますね。
○角川本部員 ですが、パッケージのCDの売上と、電子配信とでは、どんなにしても電子配信の方が及ばないんです。パッケージの方がどうしても売上が上がりますから、産業規模としてはパッケージを売った方が、大きな産業規模になるわけです。ですけれども、ユーザーから見れば、パッケージよりも電子配信をされた方が便利であると、これも事実だと思うんです。
しかし、今度はクリエーターとして作曲家だとか作詞家が、そこで報われるかどうか。あるいはそれを支援している人たちが報われるかどうか。これも大きな重要な問題を片方として持っているんだと思うんです。
ですから、今、iPodが非常に話題になっていますけれども、iPodによって実演家たちに幾ら還元されるかということを考えますと、非常に微々たる金額ではないかと。もうiPodを発明した会社は非常に空前の利益を上げていながら、作曲家、作詞家に対して還元されている金額は幾らなのかという調査を一回この会ですべきだと思います。
○牛尾座長 ユーザーは、喜んでいますね。
○角川本部員 ユーザーには便利なんだけれども、結局、作曲家や作詞家が報われない。ですから、そういう点では、著作権の在り方についてもユーザーに便利であるような著作権の在り方を考えなければいけない一方で、クリエーターを保護してあげる著作権もまた必要なんだと。非常に難しいことを申し上げるようですけれども。
○牛尾座長 ユーザーが主役であって、クリエーターを大事にすると。
○角川本部員 こちらにユーザーがいて、こちらにクリエーターがいて、そこに何かバランスを取った考え方は何かということを討議させていただきたいと思います。
○牛尾座長 ビジネススキームがだんだん発展しながら壊れてはつくるというところに発展しているビジネススキームがあるんですね。だから固定できないからこの関係も固定できないんです。
○角川本部員 一概にいけないと言っているわけではないのですが、重要な問題ではないかと思います。
これは、私の個人的な意見にとどまってしまうかもしれませんけれども、例えば、来年はナンバーポータビリティー制というのが携帯電話で始まって、ドコモとauとボーダーフォンの番号が統一化されます。
そうしますと、今の携帯でコンテンツを提供していた会社の皆さんが、利益の源泉はどこに求めたらいいかというビジネススキームが壊れるのではないかと、私は思ったりしているのです。
ですが、それはユーザーから見れば、3つの電話番号、3つの会社が自由に使えること、これは重要なんです。
ですから、それに関して言えば、やはりナンバーポータビリティー制は正しい選択だと思うのですが、そこでビジネススキームをつくっている方々が、次にどういうビジネススキームをつくれるかということも重要になってくると思います。
そういう点で、デジタルコンテンツのマーケットを振興するということは、大命題だと思います。つまり量の拡大というのは大問題ですけれども、併せて質の問題も問われていかなければいけないと。社会現象とか、そういうことを含めたデジタルコンテンツが社会に与える影響、それからクリエーターに与える影響、そういう質の問題を考慮していくべきではないかということをここで申し上げたいと思います。
○牛尾座長 アメリカなんかはどうしているんですか。
○角川本部員 その点については、今、日本が先行しておりますから、むしろ日本でそういうものをきちんと提案すれば、世界に先駆けて非常に貴重な提案になってくるんだと思います。
○牛尾座長 デジタルというのは国境がありませんからね。だから、世界で一番いいところに落ち着くという非常に怖いところがあるから。
○角川本部員 ブロードバンド環境でも日本が一番進んでいると言われていますから、むしろ世界の方が日本はどうやって対応してくるのか見ているのだと思います。
○牛尾座長 わかりました。
では、今度は委員の先生、荒川さんから3分ぐらいずつお願いします。
○荒川委員 今の角川さんの意見に私は、多少違うことを申し上げることになりますけれども、基本的に私の意見というのは、これまでのパッケージメディアを中心にしていたときの著作権管理のやり方、または利益配分の仕方というものをネットワーク化の時代におけるコンテンツ配信においての著作権管理及び利益配分のやり方ということが、変わってくるのではないかということがございます。
それは、なぜかといいますと、パッケージメディアの場合、基本的にはコピーをさせるか、させないかという二者択一しかほとんどの場合なかったと。ですから、CDにコピープロテクトをかけるのか、かけないのかという議論じゃないと、流通をコントロール方法がなかったと。特にデジタル化されたものというのは、コピーができてしまえば、ほとんど劣化がなく、流通ができてしまうということがあるので、CDショップでレンタルCDを借りてきて、例えばMDに落とすというようなことをされてしまった場合、全く補償の仕方がなかったと、または何回コピーされたかということがわからなかったと。
でも、ネットワークの時代でうまい著作権管理の仕方を考えれば、何回またはどういう履歴でコピーされたかと、誰から誰に渡っているのかというようなことも管理することができるようになるだろうと。
実際に技術的に可能なことは、皆さんもよく御存じだと思いますけれども、技術的な安全性については、議論も必要になるとは思いますけれども、要はコピーさせるか、させないかではなくて、コピーをしたときに、どういう履歴が残るか、またはそれをどう認証して課金させるかということを考えていくと、たくさんコピーしてくださいと。その代わりそれについては認証も必要になるし、課金もされますよと。小額課金で結構ですと、どんどん課金もされますよというような時代になったときに、果たしてユーザーさんがそれでもいわゆる海賊版のようなものをどんどん使うようになるのだろうかということを考えると、今の着メロ、着うた、その他小額課金でコンテンツが買えるというような文化が定着してきた状況を考えますと、必ずしもそうはならないのではないかと。たくさんコピーしてもらったら、実は制作者が非常に儲かるというような仕組みなり、また著作権管理も楽になるということは、今までのようなパッケージメディアを対象にして著作権管理をしなければいけなかった団体の存在そのものが少し変わってきて、もうクリエーターが直接または非常にそこに近いところが直接コンテンツ管理ができるようになってくるのではないかと。
勿論、これは個人情報管理もきちんとできないと、認証や履歴がわかってしまうということが、非常に問題にはなりますが、恐らくそこを隠蔽しながら追跡する手段というのはあるはずであると。
○牛尾座長 技術的には可能だと。
○荒川委員 技術的には可能であると。ですから、そういう仕組みをいち早く取り入れていく。
ここで次に問題になるのは、恐らく既存の、今までパッケージメディアを通して文化創造に貢献してきた方々をどのような形で保護していったらよいのかと。ここを無視してしまいますと、せっかく今までつくってきたそのものを否定されて、新しいディストリビューションの仕組みができてしまったら、人たちの存在がなくなってしまうじゃないかということで、なかなかそこを容認できないというお話になってしまうと思うんですけれども、恐らく利益の管理の仕組みをうまく考えていけば、この問題も解消できるんではないかと。 なぜならば、課金についても電子的な課金でできるようになっているわけですから、物理的にお金を払うということになると、最終的にそこをコントロールすることは非常に難しくなりますけれども、どういう形で電子的な課金が行われて、それを配分していくのかということもネットワークの時代であれば、できるのではないかと。それをある時間軸の中で配分率を変えていく等々をしていけば、かなりリーズナブルな形でまとまっていくのではなかろうかと。
私は、先ほどiPodの問題が出ましたけれども、ああいった製品は、日本から発信されるべきものではなかったのかと。インフラも整っていて、メーカーさんもたくさんいて、しかも良質なコンテンツがあるということを考えれば、ビジネスの仕組み、その他は日本から出てくるものではなかったのかと、そういうことをすることによって、どんどんと国自身がよくなると。そして著作権者が非常にもうかるという仕組みが可能になったのではないかと考えておりまして、今からでも遅くないと、早くやってそういうものを実現できたらよいのではないかなと考えているということでございます。
○牛尾座長 iPodが出なかったのは、日本がネットワーク社会に踏み切っていないという古い体制にあったからということですか。
○荒川委員 ああいうメモリーに蓄えて再生するというものは、ソニーさんにしろ、東芝さんにしろ、各電気メーカーさんはiPodに先駆けて出していらっしゃいました。ただし、著作権管理の仕組みですとか、実際の音楽そのものの配信の仕組み、その辺の許認可の問題というようなところの枠組みが、やはりつくり切れなかったというところが、一番大きな問題ではなかったかと思います。
○牛尾座長 金丸委員どうぞ。
○金丸委員 お手元の資料5−2をご覧いただけますか、全部読んでいますと、時間がありませんので、かいつまんで申し上げます。
私は、基本的には2つポイントがありまして、行きつくところは、前段に書いてあるんですけれども、消費者の視点で考えてみると、コンテンツの消費時間、アナログであってもデジタルであっても、1日仮に平均4時間とか5時間、もっと暇な人がいらっしゃるかもしれませんけれども、この程度の時間配分であると。
それから、財布の中身についても限界がありますので、ある一定金額の、いわゆる一見パイの取り合いに見えるわけであります。
多分、既存のメディアの皆様と、それからデジタルコンテンツを促進したいと思っていらっしゃる両陣営は、多分片方が得して片方が損するんじゃないかという意識が相当ありますので、さっき荒川委員がおっしゃられたとおり、国家としてはいい環境にあるにもかかわらず、先進大国にはなっていないということなので、基本的には知的に、そして戦略的にパイの分け方を決めていくということでしょうと。
もう一つは、そのときに基本的にはオープンとクローズドということを戦略的に国としてマネージメントしなければいけないというのが、私の2つの結論みたいなことです。こういうことは重要だろうと。それは後にちょっと触れます。
1番目に「インターネット以前を振り返って」と書いてありますけれども、基本的には揮発性というと語弊がありますが、映画もテレビもその瞬間に放送されて、あるいはその瞬間見て終わりということから、蓄積できるメディア機器ができてきて、そういう技術革新と表裏一体なわけですけれども、そういうことで、消費者は自分が気に入った時間に、気に入ったものを見ることができるというタイムシフトという付加価値を手に入れることができたということでございます。
2番目は、インターネット以降、我々はブロードバンド化ということを国家戦略と掲げて、今や、先ほど来皆さんおっしゃっていらっしゃるように、プラットフォーム的にはものすごく先に行っている状況にあると。
それから、先ほど一番最初に御説明があった事務局の資料によっても、コンテンツが流通していく下支えをするすべてのハードや機器においては、今、日本が最先端であるわけであります。
基本的には、ここに書いてあるとおり、2番目のネットワークとストレージということと、それからCPUの進化が飛躍的にありましたので、非常にプラットフォームに対して、単純なコンテンツではなくてリッチなメディアを流通させることができたということにおいては、本来はいい環境にあるということだと思います。
3番目に書いてありますけれども、それでは、課題ということなんですけれども、昨今話題ですけれども、放送とITの融合、インターネットの融合とか言っていますけれども、レガシーメディアさんとのすみ分けというものは考えないと、なかなか今持っていらっしゃるコンテンツは流通することにならないだろうと思っております。
2枚目のページですけれども、さっきの時間でいいますと、消費機会の拡大ということなんですけれども、勿論1日4時間程度と申し上げましたけれども、それ以外に我々は移動する時間というような一見生産性のない時間がありますけれども、そういうときに、今や移動中の携帯での動画を見たりとか、あるいは音楽を聞いたりということが可能になっていますので、この冗長性のあった時間を、あるいは皆さんの収入に取り込むことができればプラスαでパイが大きくなるということなので、これは両陣営歓迎でしょうということでございます。
それから、海外等の可能性については、さっき浜野委員がおっしゃられたとおりでございます。
あと、検索性の向上なんですけれども、これはいろんなコンテンツに対して、タイムリーに非常に消費者の皆さんにとっていい形で、しかもそれが複雑な操作なく手に入るという仕組みが必要でしょうと。
そのときに、Google社は世界中のものが効率よく検索できるようなことをお考えですけれども、そういった横断的に体系立って手に入るという仕組みみたいなものも、国としては、それは民間がやるか国がやるかどうかですが、そういうことを支援してはどうかなと思っております。
それから権利関係、これは非常に重要なんですけれども、多分この後御専門の國領委員がおっしゃるかもしれませんが、さっき荒川委員がおっしゃった、いわゆるトレーサビリティーみたいなことについては、先ほどの人が何か行為したときのログ情報が今は取りやすい。でも取りやすいということは、ある意味ではもっと知的な人が現われると改ざんしやすいということにもなりますけれども、そこはイタチごっこですが、そういうことを乗り越えると、我々は国家モデルとしてももう少し進化したステータスになるんではないかと思います。
これは提案なんですけれども、クリエーターの皆様が、あるコンテンツを生み出してから、それは生み出すときはアナログであって構わないんですけれども、そこから消費者の手に渡るまでのプロセスについて、いわゆるバリューチェーンみたいなものを一度提起して書いてみたらどうかなと。そうすると、両陣営で障壁になっているポイントがクリアになりますので、そこを技術なり、あるいは最終的には法律といいますか、法律にもイノベーションが必要で、マイクロソフト社が世界に法律がないときに、デジタル肖像権という権利を勝手にというとあれですけれども、考え出して、それでそういう権利を買っていって、そういうマーケットができてから社会がついていくということも可能ではないかなと思っていますので、法律のイノベーションも必要だろうと思います。
それから、先ほどのクリエーターの方々も含めて、あるいはその組織も含めて、いずれにしても利用者の利便性だけが偏った形であるのではなくて、小額、1円でも2円でも5円でも10円でもお使いになられたら、お金を払うということが、それは国がやるかどうかはわかりませんけれども、流通ネットワークのようなところで、代理人みたいな人が現われて、あるいは監視をする人がいて、権利関係が毀損することがないようなことも可能ではないかと思います。
あとは、これは既存の業界、私は詳しくはまだわかりませんけれども、インフラのところは、先ほどクローズドとオープンと申し上げたんですけれども、もし現在、クローズドな技術仕様があるのであれば、それが本当に国益に合致していると、例えばそういうことをクローズドにしているがために、ある企業が物すごい儲かって、ものすごく税金を払っているかということであれば、仮によしと。あるいはそうでもないクローズドである業界が閉じたままというようなものがもしあれば、技術仕様については、これはオープンにするか、あるいは戦略的にクローズドにするかは議論をしなければいけないんじゃないかと思います。
最後に組織リッチから個人リッチへということで、知財は人がつくり出すものでございますので、個人のインセンティブがどんな組織に属していても永続的に働く制度及び意識改革が必要であると。
むしろ、組織が個人のサポーターになるという時代が来ないと、真の意味でのデジタルコンテンツ大国にはなれないんじゃないかなということでございます。
一定期間、富を再生とか、再創造していないすべての権利は、期限付きで、例えば開放する国民の義務を負うとか、そういうようなことがいいんじゃないかと。それはただではなくて、一定条件のお金が払われると、例えば開放する義務があるということもいいんではないかと思います。
以上でございます。
○牛尾座長 どうもありがとうございました。
では、続きまして、久保利委員お願いします。
○久保利委員 久保利でございます。当日配付資料として、エンタメロイヤーズネットのパンフレットの配付をお許し願いたいと思いますが、よろしゅうございますか。
私が今日申し上げたいのは、レジュメはつくってまいりませんでしたけれども、基本的にクリエーターが適正なリターンを得られる仕組みというのがないと、クリエーションはスタートしない。創造的なそういうことというのは、やはり利益配分のシステムと絡むのではないかと。
すなわち、今までの業界の慣習、慣行という中では、どうしてもクリエーターというのは、かなり劣位の部分になっている。
これは、勿論、契約書がないというところもあります。あるいは契約書をつくってもなかなかクリエーターの権利保護へと話が進んでこないというところもありまして、ヒットに応じた報酬がそういう意味では、どんなにモダン化して、新しいIT云々と言っても、最後にクリエーターに一体何が返ってくるのかというのは、非常に心もとないと思います。
そういう点で、エンターテインメントの問題というのは、実は経済環境の問題と法律の問題と2つがセットになるべき問題で、仮に経済環境の方がよくなってきたとしても、それを担う人材というのがいないと始まらないということからエンターテインメント・ロイヤーという形でクリエーターを支える人材というものを含めてつくっていこうとしています。
お手元にお配りいたしました「エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワーク」ELNと言っておりますけれども、ここには現在333名の弁護士と、あるいは弁理士さん、あるいはエンタメ業界の方々、トータルで約500名が結集しておりまして、弁護士が偉そうに法律論だけを説くのではなくて、現場の方々から教わりながらその問題点を一緒に頭を寄せてあってつくっていこうという組織であります。
今まで日本の場合には、学会はありました。あるいは弁護士でそういうのを研究する研究会はありました。しかし、実務界と弁護士界が一緒になって、クリエーターの悩みをどういう契約体系にしたらいいのか、その契約を結ぶためには、どうやって力を持っている企業の側に迫っていったらいいのか、独禁法がどこまで有効なのか、それ以外の方法はないのかという戦略・戦術まで含めて議論をしていくというところはなかったわけです。まして実行する部隊もなかったということであります。
結局、さまざまな議論をしても、最後は実利がどこに落ちるか、それがクリエーティブなものをつくっている人たち、クリエーターにとって、よしもう一つ新しいものをつくってやろうと、次のサイクルに入ろうというインセンティブがないと、サイクルは回転していかないと思うわけでありまして、そういう意味では、会社が儲かりました。それでおしまいではなくて、会社もクリエーターもユーザーもみんなハッピーになったと、Win−Winだというところから次のステージが始まると思います。
そういう点で、今まで日本で欠けていたのは、その種のリーガルサービスあるいは弁護士というものが弱かったんではないかと考えまして、これをつくっていく。それが結局クリエーター大国につながるだろうし、ビジネス大国ということにもつながっていくだろうし、コンテンツそのものがすばらしいものであるということは前提とした上での話ですけれども、そういう次の世界、世代の展開が必要ではないかと考えているわけです。
したがいまして、知的財産推進本部の力添えもあってできたネットワークでありますけれども、更に、今、公益法人、NPO法人化しようということで、12月には何とか目途が立つと思っておりますので、そういう形で公的なものとして、また還元をしていきたいと考えております。
以上でございます。
○牛尾座長 では、國領委員お願いします。
○國領委員 國領でございます。よろしくお願いします。
5−3というのを持ってまいりました。余り細かい話をせず、大きいところからまいりたいと思いますが、まず最初は荒川委員からもお話があったと思うんですけれども、基本的に拡大再生産が可能だという視点を持ちたいと思います。
アジアの経済的なレベルが上がってきたりしますと、当然のように物質的なものに対する市場から、豊かな文化生活に対する市場のようなものが非常に大きくなっていくということは、ほぼ明らかだと言ってよろしいかと思います。ここはやはり利用者、ユーザーに焦点を当てて、そこに向けた豊かなデジタルコンテンツを供給するということを念頭に入れていけば、途中にいろいろな生みの苦しみとか、既存の仕組みとの軋轢のようなことがあるのかもしれないんですけれども、最終的には市場を拡大することを通じて、クリエーター、更には流通業者も含めて拡大再生産をしていくという攻めの発想をするということは可能なはずです。是非それを基本的なスタンスとして置いていきたいと。
守るという姿勢を担ってしまうと、どんどん片側でどんどん拡大しているネットワークの世界がありますので、どんどん潜っていってしまいますので、非常に両者にとって不健全な方向になっていくと思います。
その上で、著作権は基本的に尊重すると、このスタンスもちゃんと持っておきたいわけでありまして、一部ネットワークの上では著作権なんか要らないみたいな議論をする人もいるんですけれども、それはそうではないだろうと。権利者の権利は、きちんと守りながら、ただし現在硬直的になっているんではないかと思われるようなライセンスのスキームであったり、業界の慣行であったりするようなものについて、より新しいビジネスモデルが構築できるように、いろいろ工夫していきましょうという基本スタンスで行けるとよろしいんではないかと思っております。
それを申し上げた上で、やはり各論にやや踏み込んで、例えばこのワーキングもどのぐらい踏み込めるかというのはあるんですけれども、言ってきたいようなところが多分あるんだろうと思います。
神様は細部に宿るみたいなところがありまして、例えばA番のIPによる地上デジタル放送の再送信の課題なんかにつきましても、これはほとんどワイドショーネタになってしまったので、ちゃんとした議論するのがやりにくい環境かもしれないんですけれども、やはり例えば地域限定性とか、同一性保持の原則であるとか、こういうような辺りについて、どういう具体的なルールをつくるかによって、構築可能なビジネスモデルが非常に大きく変わってまいります。ここにおいても、やはり世界に先駆けてこの分野できちんとしたビジネスモデルを大きく成長させた最先端の国家になるということを目指して制度をつくっていくというスタンスを是非取りたいではないかと思います。
もう一つ、Bのところで申し上げたかったのが、著作権のところにすごく注目が集まるわけなんですけれども、現実問題は、例えば技術規格なんかのところのつくり方によって、事実上の規制ができている場合があるので、これも目を向けていくべきではないかと。
例えばということで出したのが、サーバー型の放送なんかにつきまして、今のところ物理的な家庭内と、みんな夕方5時になると家に帰るという、少なくとも我が家ではそうではないライフスタイルを想定して家庭内というのが定義されているわけなんですけれども、例えばそうではないようなライフスタイルに合わせて、ただし著作権保護はきちんとやっていくようなものというのを、むしろ取り入れていこうと。今、つくっているバージョンでは間に合わないんだろうと思うんですけれども、そういった技術的な規格の中で決まっているというものについて、拡大再生産を目指した考え方というものを考えていきたいというのがBです。
CがP2Pにつきましては、非常に悪いもの、海賊版を助長するものというイメージが非常に強いわけです。現実にそれが起こっていることも事実なので、そこについての対応というのは、さまざまな技術を活用しながら対応するとしながらも、やはりあれはユーザーの学生なんかと暮らしていましても、やはり友達と同じ文化的体験を共有したいとか、これは面白かったとかというのを共有したいというのは、これはかなり文化なんです。
こういうものをやはりどちらかというと、活用するような、そこでビジネスモデルをきちんとつくっていくというような発想で、ですからまっとうなP2Pの利用の仕方というのを、むしろ促進する、その上でビジネスモデルがちゃんとつくれるような方策というのを考える方がとにかく悪いものなので抑え込んでいこうという発想をするよりは、はるかに生産的な結果になるんではないかと思います。
D番目が新規参入者への機会提供ということですけれども、こういうものについて、やはり新しいプレーヤーが入ってくるということについて、基本的に生産的なものであると考えたいと思います。そこで具体的に何をやるかという辺りが結構大事だと思いますので、権利集約機構のようなものを活用しながら、やはり新規参入業者でもコンテンツに対する公正なアクセスの活用ができるようにして、ビジネスモデルをつくれるようにする。無理やり既存業者を買収して乗っ取ろうとしないでも、新規事業者がちゃんとユーザーに対して的確なサービスが提供できるような構造というのをつくりたいということではないかと思います。
以上です。
○牛尾座長 委員の拡大再生産可能というのは、前提としてはパッケージメディアからネットワークの方に大局が動いていくということを前提にしているわけですか。
○國領委員 そうですね。どちらかというと、何と言っても市場の方が文化的な市場が特にアジアにおいて必ず拡大するでしょうと。それに対して、パッケージメディアで応えたいビジネスは、パッケージメディアで応えればいいし、ただしネットというのは足が早いので、そこの部分に成長性が高いというのは、私の十数年間の思いでずっとやってきているわけなんですが、基本はとにかくユーザーに目を向けようという部分だと思います。
○牛尾座長 わかりました。
それでは、平澤委員お願いします。
○平澤委員 平澤でございます。よろしくお願いします。
資料5−5を持ってまいったのですが、今まで重要な御発言がございましたので、その辺を踏まえつつコメントしたいと思うのですが、まず弊社というのは、全くデジタル・コンテンツの中にどっぷりいる会社ですが、あえてコンテンツ全体のことについて、もう一回立ち返りたいと考えております。
まず、資料の2番目のところでございますが、CDの売上推移を見てみたいと思うのですが、96年には5,800 億円ぐらいあった売上が、2004年には、3,700 億ぐらい。半減とまでは言えませんが、ここまで減っています。
それに対して、JASRAC、日本音楽著作権協会ですが、その収益というのは逆に増えているわけです。
この原因というのを、いわゆる既存の産業、いわゆるCDを売っていらっしゃるような業界の方々というのは、コピーが問題であるとか、それから携帯電話の着うたや着メロというのが氾濫しているから問題だとか、そういった点を指摘されるわけですが、そういった点もあるかもしれませんが、実は私は余りそんなふうに考えていないのです。
これは、エコノミックな視点でとらえるべきだと思っていまして、まず幾つか考えられますが、例えばCD、エンターテインメントに圧倒的なお金を使う世代というのは、やはり10代、20代が多いわけです。
彼らの、いわゆるお小遣いです。この絶対額というものに対して、今、何に使われているかというと、中心はやはり携帯電話の通信料ですので、その限られた中で、例えばCDが3,000 円するのは、10年ぐらい値段が変わっていないわけですから、そういったものに使う余裕があるのかという根本的な問題というのが考えられると思うのです。
そうなってくると、さっき御発言が幾つかありましたが、コンテンツに対して本当に今の価格帯でいいのかという問題があります。特にパッケージメディアに関して申しますと、ユーザーをばかにしているような話が一つあります。皆さんお気づきかどうかわらかないですが、まず、例えば「タイタニック」などの旧作映画というのは、今、多分2,000 円以下でDVDが買えると思います。それに対して、サウンドトラックは、多分今でも2,500 円から3,000 円しております。
これはユーザーから見てみると、2時間映画をたっぷり見て音楽を聴いて、1,980 円で買えるものが、サウンドトラックは再販指定商品なので高いわけです。こんな現状があって、ユーザーが本当にお金を使って買うのかというところから考えると、以前邦楽版の逆輸入を禁止という話がありましたが、私は正直言うとかなり疑問に思っています。
そういった中で考えてみると、例えば携帯電話だけ見ても、基本的に日本の通信キャリアというのは従量性において産業構造として成り立っている以上、例えばIPフォンを積極的に今すぐ導入できるかというと、非常に厳しいと思うのです。
そして、このことは、先程から話をしています、CDに関しても言える。急激に全部パッケージ販売をデジタルに移行していくということが簡単にできるかというと、やはり産業構造的に難しいと。
だから、確かに革命的な変化というのは、多分机上の空論としてはいろんなアイデアが出ると思うのですが、今、どうやってシームレスにユーザーのマーケットを見据えつつ移行していくのかというのは、非常に難しいのではないかと考えます。
では、どうするのかという中で、我々が今やってきたことを1つの例としてお話ししたいと思うのですが、それの1つが着メロです。
着メロというのは、どうしてこんなに早く普及したかというと、まず、既存の産業構造の人たちと、ほぼ交渉せずに創った新たなマーケットなわけです。要するに着メロというのは、いわゆる著作物を演奏して、いわゆる着信メロディーというデータに変えて配信をしていくわけなので、原盤権に絡んでくるような、作家との交渉、レコード会社との交渉、プロダクションとの交渉なくできる構造です。すなわち、通信カラオケ業者が、そのままビジネスに参入できるという特殊な構造体です。
その中で、我々はフォーマットというのを提唱したのですが、基本的にはコピーをすると、実はばれてしまうなど、フォーマットの中にそういったものを入れて、著作権を保護しつつ、課金をしていくということをやって、現在、海外でほぼ着メロをやっているすべての国に、我々が提唱しているフォーマットをベースに使っているわけです。
それを見てみると、非常に面白いことがわかって、日本だけでなく世界を見てみると、例えば着メロを複製して改ざんしても、中を見ると、誰がつくっているかというのはわかるのです。これは、俗に言われているDRM、デジタル・ライツ・マネージメントみたいなところに関わってくるのですが、例えばそういう仕掛けをしておくと、コピーされてもすぐにわかってしまうわけです。
これは、先程申し上げたような、音楽の既存の産業構造のものを二次利用したのではなくて、全く新たな産業として着メロというものを生み出したので、世界的に普及していったのではないかなと考えています。
あと幾つかポイントとして著作権に関する料率であるとか、課金の方法が日本と海外は違うので、簡単にデジタル・コンテンツに関して、世界中同じようなやり方ができるかというと、非常に難しいと考えられます。
というのは、例えばお隣りの韓国ですが、徴兵制の国なので、国民全員が社会保険番号というのを持っています。
ですから、パソコンの課金だろうが、簡単に携帯課金でできてしまうということがございますので、ここがまず圧倒的に日本と違うと。
また、著作権料率の話をしますと、例えば着メロが日本では300 円で大体10曲程度、だから1曲30円ぐらいですが、アメリカの場合、1ドルだったりするのです。全くプライスが違うわけです。ですから、著作権料のリターンも、当然変わってくるという現状があります。
それから、日本の場合は、JASRACに著作権使用料を払う構造ですが、アメリカやヨーロッパの場合は、例えばその権利を持っているレーベルだとか、レコード会社などに約半分支払うケースがございます。そうすると、日本で言うところのコンテンツプロバイダーが参入して取っていくというところが、いわゆる取りしろがなくなるわけです。そうすると、レーベルから直接ユーザーに配信するというような構造になってしまうと。これは、日本とは全くビジネスモデルが違うわけです。
そういった点で、簡単にデジタルコンテンツといっても幾つかの問題があるので、例えば日本と海外のコンテンツの現状の違いというのを、まずスタディーするというのは非常に重要なことだと思います。
それと、さっき申し上げた既存の産業とどういうふうに関わって新たな産業モデルを創っていくのか。ビジネスモデルというのは、我々は着メロでは創造できましたが、そう簡単にビジネモデルが創造できるのかなというと、非常に大きな課題があるのかなと。
その課題は何があるのかというと、さっきの私のパッケージの内外価格差の問題であるとか、再販の問題だとか、そういったところをひとつひとつ洗い上げていく必要があるのかと考えております。
以上です。
○牛尾座長 ありがとうございました。
中山本部員お願いします。
○中山本部員 このワーキンググループで議論をすべき大事な問題は、ほとんどもう話し尽くされたと思いますので、残った問題についてお話をしたいと思います。
まず、クリエーターですけれども、これは先ほど久保利委員がおっしゃったことと基本的には同じなんですけれども、基本的にはクリエーターを冷遇しない、本当は厚遇すると言いたいんですけれども、現状を見ていると、それどころか冷遇しないことが、まず第一だという感じがいたします。
これは、基本的には成長が見込まれて、現に発展をしている産業において、なぜクリエーターが冷遇されているのか。現にアニメをつくっている末端の若いクリエーターなどは非常に冷遇されていると報道されております。
末端だけではなくて、例えば世界の宮崎大監督も、スピルバーグに比べたら収入は微々たるものであると言われております。
これは、何とかしなければいかぬというのは、別に今日の会議だけではなくて、昔から言われているんですけれども、なぜこういう構造ができたのか、私は理解できないです。でも、このペーパーを見ても受注産業であるとか、あるいは業界の慣習であるとか書いてありますけれども、それだけでどうも説明はできない。なぜ、これが冷遇されているのか。そこに産業政策という観点からメスを入れて、その後、委員のおっしゃったようないろいろな根本的な問題について、やはりワーキンググループで検討してほしいと思います。
それから、ユーザーの問題ですけれども、ユーザー重視というのは当たり前のことで、異論がないわけです。ブロードバンド時代において利用しやすいコンテンツは十分供給されていない、何とかしなければいけない、それが恐らくこのワーキンググループの一番大きな議題だろうと思うんですけれども、それは勿論そうなんですけれども、しかし、その前に、例えば韓国なんかと比べると、まだ日本は遅れている面があるんではないかと思います。
例えば、韓国などは初等中等教育の生徒全員に末端を持たせる、あるいは持てない人は公費で負担をして、とにかく全員に持たせると。全員持っているということは非常に大きな意味があるので、誰かが持っていないと、やはりインターネットと紙と両方やらないという事態が生じるわけで、全員に持たせるというところに意味があるわけです。
ちょっと前に、韓国のある教授が私のところに留学してきたんですけれども、普通留学のときには、母校の講義は休んで休講して来るんですけれども、日本からインターネットで講義をするから、講義を休まない。
ついては、そういう設備を東大に貸してくれというんだけれども、東大にはないんです。これまたちょっと前の話ですけれども、東大法学部の学生と、ワシントン大学ロースクールの学生と共同セミナーをやると、議論しようとしたんですけれども、議論するテレビ電話の施設が東大にないので、アメリカのセンターに借りてやったという情けない状態があるわけであります。
國領委員のところの藤沢キャンパスというのは、かなり整備していると聞いておりますけれども、やはり日本全体の初等中等教育や大学においては、まだまだ整備が足りない。 これは、やはり学校教育できちんとやるということは、機器の普及というだけではなくて、そこでのマナーだとか、危険性とか、いろいろなことも教育できますので、やはりインターネットの教育は基本だろうと思います。
そこのところを重視して、要するに好きな人だけがやるというのではなくて、すべての人がネットから等しく情報を得られるという状況を根元からつくっていく必要があるんではないかと思っております。
それから、私の専門は著作権なんですけれども、著作権を含む知的財産法なんですけれども、これについては、いろいろ議論の過程で意見を申し上げたいと思います。
○牛尾座長 大変貴重な問題提起で、金丸委員がおっしゃった、日本の社会には組織リッチから個人リッチへの流れがなかなかできない。また哲学としてそういうのがネガティブであるということも1つある。
IT社会というのは、やはり非常にアメリカ文化の上に乗っかっている技術だと思っているので、日本のように隠蔽体質とか、個人を重視しないとか、即時に情報を公開するというのは、それになじまない文化を持っている国につくっては、IT技術は実は非常になじみにくいものなんです。
しかし、企業はそんなことをいっていられませんから、世界と同じレベルでやっているところに、最近はますます個人と組織の間にすき間ができている。
教育でも全部ITでやることに対して、実に大きな反対意見があって、あくまでもツールとしての限界を超えてはならない人が非常にまだ多いわけでございます。これは世界的にもそういう議論があるんです。だから、この問題はかなり大いにその辺は準備のところで議論してもらわないと、簡単ではないと思うんです。
○中山本部員 おっしゃるとおり、すべてコンピュータ化すると人間がおかしくなってしまうと私も思います。だけど、やはりツールとして持っているということは大事だという気がするんです。
○牛尾座長 人類はITで滅びるという説もありますが、私もそう思っているんですけれども。
では、大変貴重な議論を出していただきまして、あと15分ほど時間がありますので、2〜3分で5〜6人の方にお話をちょうだいしたいと思います。
御発言を希望の方は、ネームプレートを立ててください。そういう順番にしていただきますので。
金丸委員、どうぞ。
○金丸委員 もうすぐ退席させていただきますので、発言させていただきます。
先ほどの組織リッチから個人リッチへということなんですけれども、基本的に、特に企業は、例えばクリエーターみたいな弱者の人と契約するときには、お金を払うということと権利ごと、実はその人のノウハウでできた著作物も著作権ごと丸ごと買うということが、法務部門の人と交渉したら、はなから契約書なんか変更できないと。
では、買い取られたものはどうなるかというと、本来、企業は富の再生産を行うために買ったので、その人が富の再生産をすれば、その成功体験があるので、またそのリターンを返せると思うんですけれども、その循環が基本的にはなさ過ぎると。
企業側はどうなるかというと、買ってきたものというのは、一旦B/Sに積んで、期間なり、あるいは販売数量において償却していくんですけれども、そうすると、我々の国の中に知的所有権というのは、買った人のB/S上は償却されてしまって、限りなくゼロに近づいていっていて、だから国の中に明らかにデジタルな数字で、資産として残っていないんです。
個人あるいは中小企業も含めて買われただけですから、そうすると、知的所有物というのは、今度は中小企業のB/Sにもないので、お金を借りようにも借りることができないということなので、私はお金を払うことがすべて、おれは偉いんだみたいな買い方を改めない限り、今日も現場でいろんな交渉が多分なされておりますけれども、まだ契約書があればまだしも、契約書もなくて、いつお金が入るかわからないと。多分入るに違いないと思っていて、今度はお金が入らないから、今度は入金ということを盾にとって、明らかに組織が有利だと。こういうことが社会的に改めない限り議論していてもなかなか進まないんじゃないのかと。だから、私は著作権を丸ごと買い取るときの買い方について、何らかの法律、自主規制でもいいかもしれないですね。自分の企業が知的であるというふうに、環境じゃないですけれども、何か標榜しているんであれば、著作権を丸ごと買うときは、役務提供の原価プラス5倍で最低買うとか、何かそんなことがないといけないんじゃないかと思います。
○牛尾座長 これは、メディア、アニメ、漫画等のエンタメコンテンツがテーマのコンテンツ専門調査会の最終回で出ていましたね。流通を持っている大企業との取引が余りにもバーバル・アグリーメントで文書での契約がないと、2年経っても再映権もないということが出てきて、どっと吹き出て、一人がそのような発言をすると、当初発言を控えていた人も、みんなで次から次へと発言したので、びっくりして、少し業界の様子が変わってきたと思います。これはコンテンツ、著作権の業界だけではなくて、ハードの技術の業界でも先鋭的なコンピュータをつくっている会社を一部の大会社が買うと、そのまま1回分だけで、結局、金の卵を持っている鶏をすきやきにして食べてしまうんです。何回も金の卵を生ませればいいのに、その場で食ってしまうというのが一部の大企業の考え方、育てるという気持ちがない。
これも、今日出ているパッケージ型メディアとネットワークの対比と同じように、やはり1つの成長過程における組織の対立や、思想の対立があるが、いい方が必ず勝つんだというんだったら、そのスピードを上げないといけないし、しかし、競争上勝負がつくということが一番この世界では納得性があるので、ここはやはり片方がもっと頑張らないといけないのですね。今、勝負に負けている、5勝5敗以下だと思うんです。これが、7勝3敗ぐらいになると、世の中が一挙に変わりだすと。政治の世界では、そういうことが動き出しているわけですから、これは非常に重要な問題だと思います。
ほかにどうぞ。國領委員どうですか。
○國領委員 ですから、今のお話も含めて、先ほども申し上げましたけれども、やはりきちんと権利関係というのを確立するというのは基本スタンスだと思うんです。
それが、リスク分散というもう一個すごく大きい部分があって、一律下請法と同じような発想で、そこの規制だけかけると、今度はクリエーティブに関わる大きなリスクの問題というのがなかなかできてこないので、そこのリスクを分散するようないろんな社会的なスキーム、今、いろんなファンドをつくったりする動きがあるかと思いますので、そういった仕組みづくりというものを、先ほどの著作権を集約する、ですからJASRACが音楽業界の中で一定の役割を果たして、よく流れるようになっているのと同じような、やはりインフラづくりというものもすごく大事で、そのときにやはり基本的な思想、権利関係というのをきちんと明示化することによって、その上で、やはりライセンスの柔軟化であるとか、基本的なインフラを整備したりとか、それからリスク分散、経営学者的に言うと、そこが一番大事なんではないかという気がするんですけれども、制作に関わるリスクを分け合うようなスキームというものを是非整備していきたいところなんではないかと思います。
○牛尾座長 久保利委員どうぞ。
○久保利委員 このクリエーターの問題というのは、なかなか難しくて、例えば私自身ある種のクリエーターであって、本を書きます。一生懸命工夫をしていい本を書いても印税を10%以上もらったことは一遍もないわけです。そうわかっていながら、また何で書くかというと、やはり書く喜びというか、自分が知っていること、考えたことを外に出すことによって、何らかの影響が出てくるだろうと。
そうすると、多分アニメも含めて、クリエーターというのは、金が目的じゃないよというところが1つあって、それからクリエーターと現実にそこでセル画を書いていろんなことをしていらっしゃる、言わばワーカーの人とは、また少し違うと思うんですけれども、非常に作業そのものを楽しんでいるという層がいて、そのクリエーターに対して、もっと儲けなければだめじゃないということが、どれほど彼らにとって意味があるのかどうなのか。
私の場合には、弁護士をやっていて、もう片方で著作しているから一向に構わないけれども、もしこれだけで生きているとすると、これは大変だという感じになって、印税12%にしろ、15%にしろという交渉が始まると思うんですけれども、結局、今の段階ではクリエーターという存在が、日本の中では非常におたくとか、ある意味で言うと、正当な業務に従事している人ではないという意識がずっとあって、それは結局お金ではないということがずっと来たわけでありますけれども、私はそろそろ違ってきたんではないかと考えます。恐らく金丸委員のところだって、どこだって、金じゃないよなんて言っていて、経営ができるわけないわけですから、やはりお金が必要になってきた。
ということは、クリエーターのサイドも、上場するとか、公開するとか、あるいはビジネスとしてこれを考えるという人たちが目配りしないとだめです。結局、つくることに喜びだけを感じている人たちにいつまでに任せておくと、この力関係はなかなか変わらないだろうと。
そういう点で、クリエーターを、あるいは制作会社というのがどんどん上場・公開されていくということが1つのインパクトとして、逆に送信している方とか、テレビ局とか、そういうところに対するプレッシャーになっていくのかなと。やはり同じ土俵に乗らないで、片方は趣味でつくっています。片方は金儲けでやっていますという人が、金銭交渉して勝てるわけがないと思うので、そのラインが大分変わってきているなと。そういう点で、こういうワーキンググループに多くの制作者側の方々が入ってきて、その人自身がワーカーもクリエーターも含めてビジネスとして考えるということをどんどん大きな声でおっしゃっていただくことが、公平な競争に結び付くと私は思います。
○牛尾座長 荒川委員どうぞ。
○荒川委員 私の会社もソフトウェアに関わる仕事、ソフトウェアをライセンスとしてロイヤルティーをいただくという仕事をしておりますので、今、おっしゃられていることは非常にもっともなことだと思います。
ただ、一方で、ソフトウェアの業界について言いますと、フリーソフトウェアファンデーションのようなもので、要は多くの人が、自発的にボランティアで関わっていいものをつくっていこうという動きもあって、こういう動きもまた非常に重要だと。
ただ、そういう人たちというのは、お金であれ、自己表現であれ、要するにちゃんとそうした権利が守られるということが非常に大事なわけです。ですから、すべてをお金を結び付けるということではないにしても、どうやって自分たちが行った行為をきちんと担保してもらえるのかということが重要だと。
そういうことからすれば、それらがきちんと追跡できる仕組み、先ほど國領委員の方からも出ましたけれども、そういう仕組みというのをきちんと入れていくことによって、あなたが主張する、どういうやり方であれ、その権利は担保されているんですよと。お金を取りたくないという人には、お金を取らないということが担保される。お金を取りたいという人には、お金を取るということが担保されるということができるようになると。
もう一つは利益分配、先ほど少し私が申し上げましたけれども、利益分配の仕組みというのは、これまではプロモーションの費用だとか、流通に関わる費用だとかというところ、過去にあった、そうしたものに基づいて決められてきたものが、世の中が変わってきても、それをどういじくるかということが余り議論されていなくて、ここまで来てしまったのではないか。
本であれば10%というのは、ある意味では仕方がないことなのかもしれないと。というのは、再版商品でもございますから、なかなか利益を確保していくのも大変、またはあれだけのものを在庫していくのも大変、陳列するのも大変というようなことを考えていくと、10%でもしようがないかもしれないと。
でも、デジタルで配信したときに物流コストは大幅に低減するわけでございますし、制作コストというのもかなり低減されるわけですから、そういうことからしたら、それが同じじゃおかしいねという議論になってもいいのではないかと。そこら辺がきちんと議論されずに、日本の場合は、そういうものが過去の慣習からなかなかいじられずに来てしまうといったところが問題で、その辺をきちんと議論できるにようになっていくと、もう少し変わってくるのではないかと。
かといって、既存のものをすべて否定してしまうと、新しいことをやっても、結局、それがチャラになると、みんなそうなってしまうじゃないかということで、新しいことをやるというモチベーション自身もなくなってきますし、インフラなんかもそうですね。自由競争がすべていいかというと、そんなことをしたらインフラ投資なんてする人は誰もいなくなってしまいますから、やはりそれに見合った権利はある期間にあげるよと、その代わりある期間から徐々に開放していきましょうという感覚の中で議論していくとよいのかなと思うんですけれども、パッケージがすぐなくなっても困りますし、そういうふうに私は思います。
○牛尾座長 平澤委員、何かございますか。
○平澤委員 さっき組織リッチから個人リッチという話がありましたが、その上でいろいろ考えた方がいいと思うのですけれども、確かに宮崎駿さんのような大監督があんな感じでという話が出ていましたけれども、映画業界を考えてみると、結局、日本というのは系列というのがあるわけですね。
アメリカというのは、とっくの昔に御存じのように、製作会社と配給会社というのは、独禁法違反で別々にしなさいということになったのですが、今、まだ日本というのは系列でやっています。
そういったことを背景に、昔は例えば何々映画専属の俳優とか、何々レコード会社の専属歌手とか、そういった方がいらっしゃって、実は私、もともと音楽関係にいたので契約書を見たことがあるのですが、魂まで売れみたいな内容なわけです。
こういうことがずっとまかり通っていたという背景から考えると、やはりアメリカと日本というのは文化の違いがあると思います。
やはり個を重要視するか、組織を重要視するかと、そういったところもあるので、やはりさっきの発言の中にもありましたけれども、今の産業構造というのをもう少し深く、何が問題なのかというのを洗い出すことというのは、実は非常に重要なことではないかと思います。
今、残っている、後ろにどういう方がいらっしゃるかわからないで発言しますけれども、例えば音楽の方とか、映画のコンテンツに近い方をお呼びしてお話ししましょうという話になると、すぐ映画会社とレコード会社になってしまいます。
実は、今、そういう方々を呼んでも本当にここで必要とする話は出てこなくて、今やレコード会社というのは、製造して流通するだけで、もしかしたらプロモーションもできないぐらいの力まで落ちている会社があるかもしれないですね。
そうすると、今、何が末端のところかというと、いわゆる音楽制作会社、プロダクションでしょうか。それは非常に勉強になると思うのですが、ある程度私は代弁者としてお話ししますと、やはり制度として、あるいは著作権の流通の問題というのは、整備しておく必要は絶対的にあると思うのです。日本は、JASRACがあるという話がありましたが、果たしてJASRACだけでいいのかどうかという問題もあると思います。
アメリカや何かの著作権制度、さっき私も触れましたけれども、要するに著作権料率の違い、要するにローカルルールと、グローバルのルールというのは違うわけなので、やはり国内外のルールというのをきちっと見ていかないと、本来の意味で、よく『世界に』という話が、今日のキーワードとしても出ていますから、その辺をいろいろと勉強していった方がいいのかなと考えております。
○牛尾座長 この審議会は、公開の審議会でありますので、後ろに座っている方は、自由に、どんな方が入っていらっしゃるかは、勿論名前を書いていただいておりますので、みんなわかりますけれども。
浜野委員、何かありますか。
○浜野委員 日本は、性的表現以外にコンテンツに規制がほとんどないのに、自国のコンテンツ率がこれほど多い国は、アメリカと社会主義の国を除いてありません。韓国が強いといっても厳しい規制があります。映画にしても音楽にしても、欧米、特にアメリカのエンターテインメントが世界市場を占有していますが、日本ほど洋楽が少ない国はありません。
わが国のコンテンツが健闘しているのは、クリエーターが賃金を安く押さえて、産業を守ってきたからだと私は思っています。本当は貰ってもいい分を、自分たちの産業界に寄付して守ってきたと解釈できます。つぶれないようにしていて、自分たちの雇用を維持してきた。
日本のクリエーターの頑張りは大変なものだったわけですが、ぎりぎりのところに来ていて、制作現場が崩壊しつつあります。アニメーションなどは製造業と同じ路をたどっていて、海外に出した労働者と同じ賃金で働くことを強いられ、雇用も守れなくなっています。
新しいやり方を考えていかないと、今の低賃金で産業を守るというシステムは成り立たなくなっており、是非新しいやり方をこのワーキンググループで考えていきたいと思います。
○牛尾座長 大変にいろいろと御意見をちょうだいしまして、大体この辺で議論を終えたいと思います。
本日の会合は、ここで閉会するわけですが、次回の会合は、デジタルコンテンツを巡る課題と、その対応策についての検討を深めてまいります。12月1日木曜日、11時から開催をしたいと思います。
次回の場所は。
○荒井局長 ちょっと別の場所になると思いますので、その点は別途連絡いたします。
○牛尾座長 なお、本日、委員の皆さんからちょうだいした意見は、次回会合までに第1回分の議論の整理としてまとめまして、皆様にお渡しをします。また、そのときにもいろいろと御意見をちょうだいします。このワーキンググループで参考とするために、本日の会合の資料を基に、広く国民一般の皆さんからも御意見をちょうだいすることにして、パブリック・コメントの手続に付したいと思いますので、いただいた御意見の内容につきましては、本会合に報告することで、オープンリソースでやっていきたいと思います。
本日は、誠にありがとうございました。これで終了します。
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