自衛隊の新任務「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」

(最終更新日:平成29年6月28日)

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南スーダンで活動する自衛隊をご覧ください

南スーダン派遣施設隊(第11次要員)の活動のまとめ

他国部隊及び現地の方との交流の様子

南スーダン派遣施設隊(第11次要員)の活動の様子

田中隊長(南スーダン派遣施設隊(第11次要員))のメッセージビデオ【2016年12月12日】

自衛隊が行う活動に「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」が追加されました

 国連は、外国で治安に不安が生じ、その加盟国一国では治安を確保し国民の安全を守ることができないなどの場合、PKO活動(Peacekeeping Operations:平和維持活動)を行います。日本は、国連から要請があり、憲法の許す中で、このPKO活動のために、自衛隊を派遣することがあります。このことを法的に担保するために、平成4年に国際平和協力法が国会で成立しています。

  •  「駆け付け警護」は、自衛隊が外国でPKO活動をしている場合に、自衛隊の近くで活動するNGOなどが暴徒などに襲撃されたときに、襲撃されたNGOなどの緊急の要請を受け、自衛隊が駆け付けてその保護にあたるものです。無論、自衛隊がPKOに参加するのは、国際平和協力法で決められたPKOの参加5原則をすべて満たしている場合に限られます。この点に関しては、今回の任務追加によって、いささかの変更もありません。
    駆け付け警護の説明図
  •  「宿営地の共同防護」は、自衛隊と他国の部隊の共同宿営地が暴徒などによる襲撃を受けた場合、一緒にいる自衛隊と他国の部隊が共に危険と判断し、連携して防護活動を行うものです。
    宿泊地の共同防護の説明図(従来と改正後の比較)

 国連の要請を受け、国際平和協力法で決められているPKOの参加5原則をいずれも満たす場合、自衛隊を派遣することがあります。

PKO参加5原則

  1. 紛争当事者の間で停戦の合意が成立していること。
  2. 国連平和維持隊が活動する地域の属する国及び紛争当事者が当該国連平和維持隊の活動及び当該国連平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
  3. 当該国連平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的な立場を厳守すること。
  4. 上記の原則のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は撤収することができること。
  5. 武器使用は要員の生命等の防護のための必要最小限のものを基本。受入れ同意が安定的に維持されていることが確認されている場合、いわゆる安全確保業務及びいわゆる駆け付け警護の実施に当たり、自己保存型及び武器等防護を超える武器使用が可能。 ※下線部が平和安全法制により追加された部分です。

なぜ任務を追加することになったのか、お答えします

Q1.今回新たに追加される任務を過去に行ったことはないですか?従来の法的な仕組みで不都合はあるのですか?
. 過去、自衛隊が、東ティモールやザイール(当時。現在のコンゴ民主共和国)に派遣されていた際に、日本人が経営するレストランが所在する市内で暴徒による大規模な暴動の発生や日本人が乗ったNGOの車両への難民による襲撃などの不測の事態が発生し、邦人から保護を要請されたことがありました。
 しかしながら、当時、自衛隊は「駆け付け警護」の任務が与えられていなかったため、保護に当たるための十分な訓練を受けることができておらず、法律上の任務や権限が限定されている中で対応せざるを得ませんでした。それでも現場に駆け付け、邦人を安全な場所まで輸送するなど、邦人の保護のために全力を尽くしてきました。

 こうした過去の事例にもみられるように、実際の現場においては、緊急の保護要請を受けた際に、自衛隊が近くにいて助ける能力があるにもかかわらず、何もせずにこれらの邦人などが危険に晒されてしまうことも考えられます。この事態を放っておいて良いというわけにはいきません。これまでは、現場の自衛隊員は、法律上の任務や権限が限定されていたため、十分な訓練を受けることができない中、可能な範囲で対応せざるを得ず、こうした法律上の制約によるしわ寄せを、現場の自衛隊員が押し付けられる形となっていました。

 こうした過去の事例を踏まえ、今般のPKO法改正により、しっかりとした任務と必要な権限をきちんと追加し、事前に十分な訓練を行うことができるよう、法的な枠組みが整えられました。
Q2.南スーダンで、自衛隊は、いつからPKOに参加しているのですか?
. 当時の野田内閣において、平成23年11月から部隊の調整等を行う司令部要員を、平成24年1月からは道路や避難民向けの施設などを整備する施設部隊を派遣しています。これは、その前の平成23年7月に、約20年に亘るスーダンとの武力紛争を経て南北間の和平が達成され、独立を果たした南スーダンを支援するため、同月に国連安全保障理事会決議第1996号に基づき設立された国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に対し、国連の要請を受け、自衛隊の派遣が決定されたものです。
 我が国の施設部隊は、南スーダンの首都ジュバ及びその周辺において、道路整備や避難民向けの施設構築を行うなど、意義のある活動を行っており、南スーダン政府や国連をはじめ、国際社会から高い評価を得ています。
 平成28年10月31日から11月1日に柴山内閣総理大臣補佐官が南スーダンを訪問した際には、キール大統領から、派遣施設隊のインフラ整備を始めとする日本のこれまでの協力に対する謝意が示されるとともに、今後の変わらぬ貢献を歓迎する旨の発言がありました。また、ロイUNMISS事務総長特別代表からは、派遣施設隊の活動について高い評価と心からの感謝の意が伝えられた上で、同施設隊の活動が当面継続することについて、歓迎の意が表明されました。
 
Q3.なぜ、南スーダンに自衛隊を派遣し続ける必要があるのですか?
. 南スーダンは、最も新しい国連加盟国であり、独立から間もない、世界で一番若い国です。独立から5年経過した今、国内における政治的混乱の解決が南スーダンの国造り支援の大きな課題となっていますが、南スーダンは、自らの力のみでは、平和と安定を確保することができていない状況です。
 南スーダンの治安情勢は厳しく、首都ジュバも、現在は比較的落ち着いているものの、本年7月に大規模な武力衝突が発生するなど、今後の治安情勢は楽観できない状況です。
 だからこそ、国連による平和維持活動が行われており、世界から多くの国々が部隊等を派遣しています。アフリカの国々だけではなく、
① 国連安全保障理事会常任理事国の米国、英国、ロシア、中国
② 地域別には、
  • アジアから、韓国、ベトナム、インドネシア、モンゴル、ネパール、キルギス、タイ、ミャンマー、ブータン
  • 大洋州から、豪州、ニュージーランド、フィジー、パプア・ニューギニア、サモア
  • 北米から、カナダ
  • 南米から、ブラジル、ペルー、アルゼンチン
  • 欧州から、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、スイス、ポーランド
に加え、自らも困難な状況にあるウクライナも部隊・要員を派遣しており、その数は60ヶ国を超えています。

 これらの国々は南スーダンの平和と安定のために力を合わせており、国連は、本年8月、安全保障理事会決議第2304号により、活動期間を延長すると共に、新たに4千人の地域保護部隊を創設し、増派を決めるなど、国際社会は力を合わせて取組みを強化しています。

 そうしたことから、我が国も、国際社会の責任ある一員として、こうした国際社会の努力に貢献するため、自衛隊の派遣期間を延長することとしました。
UNMISSの状況(部隊展開状況)
Q4.南スーダンへのPKO派遣が、日本にとってどんな意義やプラスをもたらすのですか?
. 自衛隊は、20年以上にわたる国際平和協力の経験の中で、カンボジアや東ティモールの国造りを支援するために部隊・要員を派遣し、国連や国際社会から高い評価を得てきました。今回、国造りを始めた南スーダンへ自衛隊を派遣し、我が国の得意分野である施設能力を用いた先進国型の貢献を行うことは大変意義のあることであり、アフリカの平和と安定にも役立つものです。
 南スーダンは6か国と国境を接し、アフリカ大陸を東西南北に結ぶ、極めて重要な位置にあります。南スーダンの平和と安定は、南スーダン一国のみならず、周辺諸国の平和と安定、ひいてはアフリカ全体の平和と安定、「希望」につながるものです。また、南スーダンが更に不安定化すれば、難民が増大するおそれもありますし、また、同国の国境管理能力が向上していかなければ、アフリカ、ひいては我が国を含む全世界に対するテロの脅威が増すおそれもあります。
 今や、いかなる国も、一国だけでは自国の平和を守れません。国際社会の平和と我が国の平和は、分かち難いものです。

 南スーダンの平和と安定に日本が貢献することによって、アフリカや先進国も含む国際社会から日本に対する信頼が高まることになりますが、それだけではありません。我が国防衛のための重要な柱の一つである域内外のパートナーとの協力関係も深まり、ひいては日本の平和と安定にもプラスの効果をもたらすことになります。自衛隊派遣は、南スーダン政府や国連はもとより、国際社会から高い評価を受けており、大きな意義があるものです。
Q5.派遣を始めて既に5年が経過していますが、自衛隊がこれまでに仕上げたものは何ですか? それらは南スーダンの国民にどのように役立っているのですか?
. 我が国は、平成24年1月から南スーダンに部隊を派遣し、その中で道路整備や避難民向けの施設をつくるなどインフラ整備により人的貢献を続けてきました。
 具体的には、陸上自衛隊の派遣施設隊約350名が、国連からの要請に基づき、ジュバ市内の国連施設内外で道路整備や避難民向けの施設の構築を行っており、厳しい治安情勢の下ではありますが、安全を確保しつつ、人道支援実施の環境作りを下支えしています。

南スーダン国際平和協力隊第8次要員の活動記録

Q6.今回、なぜ、「駆け付け警護」を新任務として追加しなければならないのですか? 南スーダンで危険度が増したということですか?
. 南スーダンにおいては、UNMISSなどの国際機関やNGOの職員などが活動を行っています。これらの活動の関係者が危険に遭遇した場合に、これらの人から、自衛隊の部隊が救助の要請を受ける場合も考えられます。このような要請に応えることは、要請された人を危害から守るためにも、また活動関係者との一層の協力関係を築き、我が国の活動を円滑に進めていくためにも必要です。こうした状況を踏まえ、新任務追加の要否について、政府として、現地の情勢や訓練の進捗状況等を慎重に見極めながら、総合的に検討してきた結果、「駆け付け警護」の任務を追加することとしました。
 自衛隊が活動している南スーダンのジュバ市内は、現在比較的落ち着いており、自衛隊が安全を確保した上で、意義ある活動を行える状況です。
Q7.また、「駆け付け警護」により、派遣される隊員のリスクは増すことにならないのですか?
. 任務が増えた分だけリスクが増すということではありません。
 「駆け付け警護」は、PKO参加5原則がすべて満たされ、かつ、その国から受入れの同意が安定的に維持されている場合に限られます。また、派遣される自衛隊は道路や避難民向けの施設の整備などを行う施設部隊です。その人員・装備などに応じ、あくまでも、安全を確保しつつ、対応できる範囲内で行うものです。
 自衛隊の活動は常にリスクを伴うものですが、しっかりとした任務と権限を付与し、事前に十分な訓練と準備を行った上で、「駆け付け警護」を適切な場合に行う体制を整えることは、自衛隊員のリスクの低減にも繋がることになると考えています。
Q8.危険度が増していなければ、「駆け付け警護」の任務の追加は不要ではないのですか?
. 南スーダンには、現在も、少数ながらも邦人が滞在しており、過去に他国で発生した事例や現地の厳しい治安情勢を踏まえると、これらの邦人に不測の事態が生じる可能性は皆無ではありません。

 今回の新任務の追加は、こうした現地における具体的な状況に基づき決定されたものであり、これにより、万が一の際に、邦人を含む活動関係者を保護する上で、現場の部隊が迷いなく任務に当たることができることとなり、これら活動関係者の安全に資するだけではなく、自衛隊のリスクの低減にも繋がることとなると考えています。

 自衛隊員が不測の事態の下で、邦人保護などの任務を遂行できるためには、十分な訓練と準備が不可欠です。新任務が追加されなければ、こうした訓練や準備もできませんでした。
Q9.今回の任務の追加は、平和安全法制が成立したことによる実績づくりではないですか?
. 違います。
 今回、新しく追加された任務は、平和安全法制の成立・施行に伴い、自動的に決定されたものではなく、南スーダンの現地情勢やこれまでPKOのために自衛隊を派遣した東ティモールやザイール(当時。現在のコンゴ民主共和国)における過去の事例を含む様々な要素を慎重に検討した結果として、今回新たに、南スーダンにおいて具体的な必要性があると判断し決定されたものです。
Q10.「駆け付け警護」が実際に発動される場合には、誰が、何を基準に、どのような手続きで判断を下すのですか?
. 「駆け付け警護」は、あくまで活動関係者の近くにいる施設部隊が、現地治安当局や安全確保を担う国連PKO等の部隊よりも、速やかに対応できるといった場合に、この活動関係者の緊急の要請に対応して、その現場に駆け付け、当該活動関係者の生命及び身体を保護するものです。
 その上で、実際に「駆け付け警護」を行うか否かは、現地治安当局や国連PKOの部隊からの情報を得て、部隊長により個別具体的に判断されることとなります。
Q11.防衛目的に出るにせよ、万が一、任務を遂行し、自衛隊の方から武器を使用したら、相手方は自分を守るためにそれを上回る反撃をし、エスカレートし、「衝突」が「紛争」になってしまうのではないのですか?
. 自衛隊による武器の使用は、暴徒や武装勢力などに対し、まずは相手方と粘り強く交渉するなどし、真に必要な場合には警告用に行われるものです。また、相手に危害を与える射撃が許されるのは、そうした行為では収まらず正当防衛又は緊急避難の場合に限られており、隊員はこれを遵守して活動を行っています。従って紛争を起こすような武器の使用は認められていません。
Q12.自衛隊員に負傷や犠牲を出さないために、どのような工夫や措置を講ずるのですか?
. 自衛隊員の任務の実施には必ずリスクがありますが、法律やそのルールの中に、安全を確保する仕組みがあります。例えば、活動地域の情勢について十分な情報収集を行うこと、隊員の安全確保に十分な装備を携行すること、派遣前に適切な教育訓練を行うこと、地域住民等との良好な関係構築・維持に努めること、などです。
 これらにより、隊員のリスクを極力少なくして隊員を派遣します。その際は、計画等をしっかりと策定するなど、様々な対応をとることによって、隊員の安全対策には全力を挙げています。十全な準備と訓練が不可欠です。
 また、PKO参加5原則が維持されていても、要員の安全を確保しつつ、意義のある活動を行うことが困難と判断される場合は、我が国の判断で部隊を撤収します。



 

平和安全法制により「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」の任務が追加されました

 平和安全法制により、自衛隊は、「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」を実施できるようになりました。これらの新任務の追加に関する政府の考え方については、「新任務付与に関する基本的な考え方」(平成28年11月15日。内閣官房・内閣府・外務省・防衛省発表)をご覧ください。

しっかりと訓練を積み、現地政府とも連携しています

 「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」を安全に適切に遂行するためには、あらゆる面で万全の態勢を整えるため、教育訓練をはじめ、時間をかけて周到な準備をしなければなりません。
 自衛隊は、新任務の追加に向けた準備を進め、平成28年8月以降、「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」の訓練をしっかりと積んでおり、派遣部隊の練度は、新たな任務に十分堪えうるレベルに達しています。

導入教育(関連法規等の講義)

導入教育(関連法規等の講義)

総合訓練(駆け付け警護の一場面)

総合訓練(駆け付け警護の一場面)

総合訓練(駆け付け警護の一場面)

総合訓練(駆け付け警護の一場面)

 また、現地情勢の把握や現地政府の受入れ同意の確認も必要です。
 平成28年10月8日には稲田防衛大臣、同月31日から11月1日までの間には柴山内閣総理大臣補佐官が、それぞれ南スーダン共和国を訪問し、我が国派遣施設隊の活動状況を確認するとともに、キール大統領、タバン・デン第一副大統領、ヤウヤウ国防副大臣等の南スーダン政府要人やロイ国際連合南スーダン共和国ミッション(UNMISS)事務総長特別代表と会談し、現地の状況を確認しました。南スーダン政府要人及びロイ特別代表からは我が国派遣施設隊の活動への謝意と今後の活動への期待の表明がありました。

 新任務の追加に向けた訓練の状況や現地の情勢などを踏まえて総合的に検討した結果、政府は、今後UNMISSに派遣される第11次隊から、「駆け付け警護」及び「宿営地の共同防護」を可能とし、平成28年11月15日に、国家安全保障会議(九大臣会合)の審議・決定を経たのち、実施のための「南スーダン国際平和協力業務実施計画」を変更する閣議決定をしました。

(参考)
 日本は、世界各地で平和と安全のための協力を積極的に進めております。国連PKO活動には、これまで、計13ミッションに、自衛隊員や警察官を派遣しています。

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