TICAD9閉会式 石破内閣総理大臣挨拶

更新日:令和7年8月22日 総理の演説・記者会見など

動画が再生できない方はこちら(政府広報オンライン)

動画ファイルは

 御列席の皆様、1993年に、このTICAD(アフリカ開発会議)が始まりまして、今年で32年ということになりました。この30年の間に、世界は劇的な変化を遂げました。このTICADが始まりました1990年代の初め、我が国は世界のGDP(国内総生産)の17パーセントを占めておりました。現在は約4パーセントということになっております。それだけ世界全体が成長したということだと思っております。1990年代は、冷戦直後でございました。この1990年代は、アフリカにとって苦難の時代でもありました。アフリカへの関心が下がり、紛争や感染症にも見舞われた厳しい時代でありました。しかし、アフリカは若い人口と豊富な資源を背景として、アフリカ連合、AUがG20(金融・世界経済に関する首脳会合)の正式なメンバーになるなど、国際社会における影響力を着実に高めてこられました。
 30年後は、世界はどのようになっているでしょうか。アフリカ、そして世界の変化のスピードは増しております。2050年には世界の人口の4人に1人がアフリカ出身になると、このように言われております。このアフリカは間違いなく、世界の成長の中心となり、世界をリードしていくことでしょう。
 今回のTICAD9におきましては「革新的な課題解決策の共創」これをテーマに掲げました。我が日本の技術・知識、そしてアフリカ発のソリューション。これらを互いにいかし、どのようにアフリカ及び国際社会における課題解決策を共に創っていくか、共創していくかについて、日本・アフリカ各国・国際機関・民間企業・市民社会など、多くの立場から、このTICAD9において活発な議論が行われました。
 私は、このTICAD9の議長として、議論に参加をいただきました全ての皆様、特に共同議長をお務めいただきましたロウレンソ・アンゴラ大統領、議長代理をお務めいただきました岸田文雄前内閣総理大臣、そしてTICAD共催者の皆様に心から厚く御礼を申し上げます。このTICAD9を開催するに当たって、多くの方々が本当に御尽力をいただきました。多くの方々の長い時間にわたります御尽力、心から御礼を申し上げる次第でございます。
 この3日間の充実した議論は、「TICAD9横浜宣言」にまとめられました。お手元にお配りをしております、これがTICAD9の宣言でございます。これを全部読んでいると2時間かかるので、読みません。読みませんが、ここにおきまして、多くのことが宣言の内容に盛り込まれたところでございます。この宣言を皆様と共に、ここで採択をいたしたいと思います。どうぞ、御賛同の方は拍手をお願いを申し上げます。誠にありがとうございました。これにて「TICAD9横浜宣言」は採択をされました。
 冒頭申し上げましたように、初回の開催から30年がたちました。この間、アフリカの成長・変化にも合わせて、TICADでの議論は「アフリカの開発」から、「アフリカへの投資」、そして日本とアフリカによる「革新的な課題解決策の共創」。共に創っていく、課題解決策を日本とアフリカは共に創っていく。そのように変化をし、深まってまいりました。
 初日に申し上げましたように、TICAD9では、分野横断的な重要項目の1つとして、若い方々・女性の方々に焦点を当てた、議論がなされました。
 テーマ別会合におきましても、日本とアフリカの若者が、30年後のあるべき未来の姿の実現のために、今何を行うべきか。30年後のために今何を行うべきなのか。そのような議論が熱心に行われました。
 それぞれの地域で活躍する日本・アフリカ双方の若者が、これから未来を形づくってまいります。そこには日本とアフリカが共に繁栄をする、すばらしい未来が待っている。そのように確信をいたしております。
 この閉会式にはユース団体を代表してポンデウさん、そして休場(やすみば)さんにも出席をいただきました。どうぞ御起立をいただきたいと思います。お二方、誠にありがとうございました。
 今回のTICAD9におきましては、皆様方の積極的な御議論を通じまして、雇用・産業育成・保健・食料など、様々な課題に対する革新的な解決策を日本とアフリカが共に創る方途につきまして、多くのアイデアが共有をされました。これらの解決策を発展させ、日本とアフリカの連携を一層強化していくことで一致をいたしました。
 アフリカは、世界の温室効果ガス排出量への影響が非常に小さい。それにもかかわらず、気候変動による最も深刻な影響を受けている。アフリカはそういう地域の一つだと言われております。具体的には洪水・干ばつなどの異常気象による被害。農業や人々の健康への影響などが挙げられております。アフリカの課題が世界の課題と結び付いている、そのように強く認識をいたしております。アフリカの課題の解決が、日本をはじめとする、世界の課題の解決につながってまいります。
 アフリカには「ウブントゥ」の精神、南アフリカのズールーの人々の哲学が受け継がれている。そのように日本では承知をされておるところでございます。それは一体何か。「あなたがいるから、私もいる」そういう意味だそうであります。「あなたがいるから、私もいる」。人は、お互いの関わりと絆(きずな)によって生かされています。
 日本とアフリカが有している豊かな人材・技術、そして知恵を持ち寄り、課題解決を通じて、よりよい繁栄を目指していく。こうした大きな目標に向けて、人や産業を育てる歩みを、共に力を合わせ進めていくことが何よりも重要であります。
 皆様方、御存じのとおり、今や世界は100年に1度の歴史の大転換を迎えています。100年前にこの世界で何があったか。1914年から1918年まで、第一次世界大戦がございました。1917年にはロシア革命がございました。1918年から1920年まで、スペイン風邪というパンデミックが世界を襲いました。何千万人もの人が命を落としたと言われております。1929年には、世界大恐慌が始まりました。ウォール街で株価が大暴落をし、世界大恐慌が始まったのは1929年のことでございました。1939年から1945年まで、第二次世界大戦。そして今年は、広島・長崎、原子爆弾が投下されて80年という年でございます。私たちは二度と大戦争を繰り返してはなりません。核兵器が使われるようなことも、決してあってはなりません。パンデミックが起こることがあってはなりません。経済が破壊されるような大恐慌、これがあってはなりません。100年前と同じことが起こるとは申しませんが、1つ1つ起こっていることは、100年前とよく似たことが、今起こっております。国際社会でも分断が進み、国際秩序も大きな挑戦に直面をいたしております。私たちが今直面しているこの挑戦を、これをはねのけ、逆に繁栄の機会とすることができるかどうか。それはアフリカの未来への投資であり、現場での課題解決策を共に創ることであり、地道に一人一人の人材を育成していくこと。これを1つ1つ積み上げていくことが重要である、私は考えております。このようなことを今日お集まりのアフリカの皆様、そして多くのアフリカの人々、そういう皆様方と確認をし、これからの30年間、日本とアフリカの協力を定義づける重要な機会になったと、TICAD9はそのような大きな成果を収めたと、このように考えております。
 日本はアフリカの皆さんと共に笑い、共に泣き、共に汗をかきながら、アフリカが直面する課題の解決に1つ1つ取り組んでまいります。それはただアフリカのためではない、ただ日本のためでもない、世界のためであります。
 今回の会合が、今後のアフリカとの関係が更に強化され、アフリカの目覚ましい飛躍と、日本とアフリカのより強固なパートナーシップの新しい出発点として、皆様方の記憶に残ることを心より願っております。
 開会式で私は、野口英世の言葉を御紹介をいたしました。野口英世は「私は、皆様に何かを教えに来たのではない。皆様方から多くのことを学ぶために来たのだ」と。そのように述べております。これは野口英世が南米で述べた言葉でありますが、アフリカにおいても同様であったと思います。ガーナで黄熱病研究に取り組み、そして命を落とした野口英世博士の言葉であります。このTICAD9を終えるに当たり、私はこの言葉の意味を実感をいたしております。多くの皆様方から学ばせていただきました。とても幸せなことでございました。私たちはアフリカの皆様方から多くを学び、その成果をアフリカのために、そして世界のために、そして未来のためにいかしてまいりたいと、このように思っております。
 改めて、このTICAD9の成功に力を尽くしていただきました皆様方、大変な御尽力に心より感謝を申し上げます。アフリカの発展、国民一人一人のお幸せ、そして御参加いただきました皆様方の御健康、そしてそれぞれの国に帰られるその道中が、無事でありますことを心からお祈りを申し上げまして、私の閉会に当たりましての御挨拶といたします。誠にありがとうございました。

これまでの総理の演説・記者会見など