アフリカにおける持続可能・包摂的・対応力ある食料システムと地域経済の未来における石破内閣総理大臣挨拶

更新日:令和7年8月20日 総理の演説・記者会見など

動画が再生できない方はこちら(政府広報オンライン)

動画ファイルは

 皆様おはようございます。日本国内閣総理大臣石破茂であります。アフリカ各国から御参加の皆様、笹川日本財団名誉会長、角南笹川平和財団理事長、鈴木ササカワ・アフリカ財団理事長、御列席の皆様方、本日は「アフリカにおける持続可能・包摂的・対応力ある食料システムと地域経済の未来、ブルーエコノミーと農業の視点から」これにお招きをいただきました。感謝を申し上げます。アフリカからお越しの皆様方は「なんだ、日本はアフリカより暑いじゃないか」というふうにお思いかもしれません。最近日本はめちゃくちゃ暑いです。今日も殊の外暑いです。私の責任ではありませんので、どうぞ御容赦をいただきたいと思いますが、これは気候変動が著しいものがございます。日本は近年、非常に気候変動によります災害が続発をいたしております。やたらと大雨が降ります。このようなことも解決をしていきたいというふうに思っております。
 今日国際社会は、紛争による人道危機やエネルギー・食料危機、防災、先ほど申し上げました気候変動を含む地球規模の課題など、複合的な危機に直面をいたしております。中でも食料安全保障は、人間の安全保障実現するため最も重要な課題の一つであります。アフリカにおきましては、過去には農産物の生産量の増加が見られる一方で、人口の増加により消費量も著しく増加をいたしており、特に米、小麦、その多くを輸入に頼っているというふうに承知をいたしておるところであります。アフリカでは現在も半分以上の労働人口が農業に従事をしておられます一方、単位面積当たりの収量は世界平均にいまだ届いておりません。農業の生産性の向上は、依然としてアフリカの大きな課題でございますが、持続可能、包摂的、対応力のある食料システムをいかに構築するかと、この本イベントのテーマは非常に意義のあるものと考えておるところでございます。日本もそんなに大きなことが言えた義理ではありませんで、というのを英語に訳すのは結構難しいと思うのですが、カロリーベースでいえば日本の食料自給率は38パーセントしかございません。これは日本の大きな課題でございますが、自給率が低いという根本的な原因は、日本とアフリカでは違っております。どのようにして食料自給率を高めていくかということについて、アフリカと皆様方と議論をし、答えを生み出すことには非常に大きな意味があると、過去農林水産大臣を務めました私はそのように考えておるところでございます。
 今年1月のAU(アフリカ連合)特別首脳会合におきましては、AUの全部の加盟国によりましてカンパラ包括的アフリカ農業開発プログラム宣言が採択をされたところでございますが、その際にフードバスケット構想が打ち出されました。このフードバスケット構想は、アフリカ各地の特性をいかして地域別に優先作物を選定をして、国境を越えて流通させるという構想でございます。強靱(きょうじん)な食料システムの構築を通じて、アフリカ大陸の食料自給率を高めることを目的としたこのイニシアティブを、我が日本国は強く支持をしておるところでございます。
 日本には技術や人材育成のノウハウ、課題解決策を現地と人と一緒に作り上げる現場主義というものがございます。ネリカ米の開発がよく知られておるところでございますが、これはシエラレオネのジョーンズ博士による研究と日本人専門家の坪井さんとの現場での実践が実を結んだものでございます。カウンターパートと一緒に汗を流すことが大事であると、このモットーの下で、アフリカの農家の皆様方に丁寧に栽培方法をお伝えいたしました上で、種もみを渡して多く収穫できた種もみを周囲の農家の皆さん方に広げていくと、こういうやり方でネリカ米は普及をしてまいりました。現在ではアフリカ54か国中23か国で高品質の米の収量増が実現したと、このように承知をいたしておるところでございます。
 本日から始まりましたTICAD9(第9回アフリカ開発会議)では、日本・アフリカ双方の強みをいかした解決策を共に追求する革新的な課題解決策の共創をテーマに掲げておるところでございまして、この方向性と軌を一にする農業、水産業の分野での日本の取組を御紹介をいたしたいと思います。ある日本の企業はアメリカの農家の方々に最適な水や肥料の投入量、散布スケジュールを提供する仕組みを通じた協力を行っております。衛星やセンサーから取得をした圃場(ほうじょう)のデータがAI(人工知能)により分析をされているというものでございます。またアフリカの持っておられる海洋という資源をいかすブルーエコノミーのアプローチも、食料供給を改善する鍵となり得るものであります。日本には養殖デジタル技術を活用したデータ管理などのノウハウがございます。これまでも笹川平和財団を始め、日本の機関がアフリカにおける持続可能な漁業や、養殖業の振興、違法漁業対策などの面で貢献をしてきております。
 JICA(国際協力機構)のアフリカ食料安全保障イニシアティブにおきましては、2.5億人分の食料生産や9.2万人の栄養改善、そして小規模農家12万戸の所得向上等を通じて、アフリカの強靱な食料システム構築に協力をしております。さらにJICAと世界銀行の協調融資によりましても、アフリカの食料安全保障や栄養の改善に貢献をしてまいります。日本は本日御列席の皆様方に加えまして、アフリカ各国政府やアフリカ連合、アフリカ開発銀行、国際機関、民間企業を含む様々な関係者の皆様方との連携を強化してまいります。アフリカの食料システムの強化に貢献をし、より多くの方々が安心して暮らせる未来を実現するため、様々な取組や協力を推進してまいりましょう。御存じの方は、アフリカの方々ではおられないかもしれませんが、今年は日本は米が足りないということで大騒ぎになりました。日本は世界各国が、米にしてもそう、麦にしてもそう、とうもろこしにしても大豆にしてもそうですが、農地を増やし農業生産を増やす中にあって、我が日本は農業生産も農地もどんどんと減ってまいりました。これは大変な問題であるというふうに思っております。やはり安心して食べられる食料を自分の国で提供するということは、国家にとって基本的なことだと思っておりまして、この問題の解決に向けて、アフリカの皆様と共に協力をしてまいりたいと思っております。
 日本はアフリカに対しまして、いろんなお手伝いをいたしてまいりました。我が日本国は、アフリカもそう、アジアもそうでありますが、現地の皆様方と共に笑って、共に泣いて、共に汗を流していくと、そういうような方針で協力をいたしてまいりましたし、これからもそうありたいと思っております。アフリカの方々の幸せというものを実現することが、日本国民にとっても幸せであると、そのような実感を持っていかなければなりません。私たちは金融資本主義でもなく、国家資本主義でもなく、本当に共に笑い、共に泣き、共に汗を流すと、そういうような方針のもとで、これからもアフリカと共に新しい世界の未来を切りひらいてまいりたいと、このように固く思っておるところでございます。本日のこの催しが大きな成功を収められますことを、心からお祈りをして、私の御挨拶といたします。本日は誠にありがとうございました。

関連リンク

これまでの総理の演説・記者会見など