長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典参列等についての会見
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(司会者)
それでは、総理の記者会見を始めさせていただきます。記者会見は、地元記者代表、総理同行記者代表、各1名・各1問の一問一答形式といたします。それでは、長崎市政記者クラブを代表いたしまして、長崎新聞の手島聡志記者から質問をお願いいたします。
(記者)
よろしくお願いいたします。国指定地域外で長崎原爆に遭った被爆体験者については、昨年12月から、被爆者と同等の医療費を助成する事業が行われ、一定の救済が進む一方で、被爆体験者が長年求めている被爆者健康手帳の交付は実現していません。長崎には、被爆体験者を含めて「黒い雨」や灰に遭ったという被爆者援護法が定める3号被爆者の要件に該当する証言が数多くありますが、被爆者認定にはつながらず、「黒い雨」被害者の被爆者認定が進む広島との格差は解消されないままです。しかし、昨年9月には、長崎地裁が、長崎で「黒い雨」が降ったとされる地域にいた人たちを被爆者と認める司法判断も示しました。被爆者同様に、被爆体験者も高齢化している中、被爆体験者を被爆者と認める政治決断をするお考えはないかお聞かせください。
また、現在、核の威嚇を伴うロシアのウクライナ侵攻や事実上の核保有国イスラエルと核開発を進めるイランなどとの戦闘、米国によるイラン核施設の攻撃など、核をめぐる世界情勢は緊迫化しています。核兵器の存在によって、むしろ核兵器使用のリスクは増しており、被爆者団体などは、核抑止論は破綻していると訴えています。唯一の戦争被爆国の首相として、「核なき世界」への道筋を具体的に描くため、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加や批准・署名に踏み出すお考えはないか、お尋ねいたします。
(石破総理)
前段のお答えでありますが、被爆体験者の方々に対しまして、被爆者健康手帳を交付するということにつきましては、過去、最高裁判決があったことは御承知のとおりです。最高裁判決においては、客観的な記録などに照らして困難ではあるが、80年前、この長崎で、原子爆弾により、被爆体験者の方も含めて多くの方々が悲惨な体験をされたということは事実であり、これを次世代に伝えていかねばならないということであります。昨年の今日といいますか、8月9日、当時の岸田総理大臣から厚労省に対して、合理的な解決策として指示をされました。つまり、昨年12月より、新たに、第二種健康診断特例区域治療支援事業、こういうものがスタートしたところであります。幅広く一般的な疾病について、被爆者の方々と同等の医療費助成ということを実施しておるところであって、これは大変大きな政策変更であったというふうに考えております。被爆体験者の方々が大変な御苦労をされたこと、そして、今も御苦労されながら暮らしておられること、現在、御高齢になっておられること、こういうことも踏まえた措置であり、政策変更ということでございます。今後とも、このような対応を着実に実施してまいりたいと考えておる次第でございます。
また、核兵器の廃絶に向けてどうするのだと、いわゆる核禁条約へのオブザーバー参加ということについてもお尋ねがありました。これも国会で累次お答えをしておるところでございますが、私どもが目指していかねばならないのは、我が日本国の独立と平和、そして、国民の生命、身体、財産、これを必ず守っていかねばならないと、これが我が日本国が国民に対して負っておる責任でございます。もう一つは、本日、思いを新たにしたところでありますが、核の廃絶ということも、唯一の被爆国である日本国が世界に向けて、あるいは現在の、未来の、そして過去の国民に対して負わねばならない責任だというふうに考えております。この二つをどのように両立させていくかと、どちらも我々が果たしていかねばならない責任だと私は確信をいたしておるところであります。したがいまして、核兵器国を、これを巻き込んで議論をしないと核の廃絶はできません。核の削減もできません。核兵器を持っている国を交えてそういう議論をしていかねばならない。それは御理解いただけるところだと思っております。核を持っている国も持っていない国も、これが参加をする仕組みというのは、これはNPT(核兵器不拡散条約)体制のほかはございません。我々として、核保有国も参加しているNPTの中において、核の削減、そして究極的には核の廃絶というものを、この体制の下で、「ヒロシマ・アクション・プラン」に基づき進めていきたいと思っておるところでございます。繰り返しになりますが、私どもは国民に対して、世界に対して、二つの責任を負っておりまして、この両方を満たしていくということをやっていかねばならないということでございます。以上です。
(司会者)
ありがとうございました。次に、総理同行記者団を代表いたしまして、中国新聞の宮野史康記者から質問をお願いいたします。
(記者)
中国新聞の宮野です。内閣記者会を代表して伺います。8日の自民党両院議員総会を受け、党総裁としての責任や党役員人事の必要性についてどうお考えになりますか。米国の関税措置をめぐり、相互関税に関する大統領令修正と自動車関税の引下げの大統領令発出の時期をどう見通していますか。自動車業界から要望が上がっている関税の影響を緩和する支援策について、今後どう対応していくお考えでしょうか。
また、被爆80年たってもなお、広島・長崎への原爆投下による被害は、犠牲者数を始め全容は分かっていません。政府として調査する必要性についてどのように考えますでしょうか。
(石破総理)
昨日の両院議員総会、また、それ以前にも懇談会というものが開かれて、いろいろな御意見が出たところであります。それを踏まえ、また、今、党において進んでいる総括というものも踏まえて、適切に考えてまいりたいと思っております。いろいろなことが並行しておりますので、そういうことをきちんと認識をしながら考えを深めてまいりたいと思っておるところであります。党役員人事については、現在考えておりません。日々、今、御指摘がありました関税問題等々、私どもが毎日毎日果たしていかねばならない政策課題というものがございますので、そういうものに全力で対応していきたいということでございまして、人事について考えておるものではございません。
関税措置をめぐっての話でございます。これは、今日帰国すると承知をいたしておりますが、赤澤担当大臣からアメリカの閣僚に対しまして、先般の日米間の合意、すなわち、相互関税15パーセント、自動車関税15パーセント、この内容を改めて確認をした上で、その誠実で速やかな実施が重要であるということを確認をしたところでございます。その中で、アメリカから、今後、適切な時期に相互関税に関する大統領令を修正する措置を採るということ、そして、その際には、8月7日以降、今日は9日ですが、7日以降に徴収される相互関税のうち日米間の合意の内容を上回る部分については、7日に遡って払い戻すと、遡及効でございますね、そういうふうにしたいという説明があったところであります。さらに、アメリカ側が相互関税に関する大統領令を修正する措置を採るとの、このようなタイミングと同時期に、自動車・自動車部品の関税を引き下げる大統領令を発出するということも確認をいたしました。先般、広島でもお話をいたしましたし、東京において自動車工業会あるいは自動車部品工業会の方々ともお話をしたところでございますが、550万人の雇用を持つ我が国の基幹産業でありますので、今申し上げましたことが可能な限り速やかに、確実に行われるように、私どもとして、あらゆる形で、これから先も強力に取り組んでいきたいというふうに考えております。もうお盆の時期に入りますが、8月中に、集中的に、関係省庁の閣僚あるいは幹部が、この間、本当に広島で思ったことなのですけれども、例えば、調味料を扱っておられる業界、あるいは化粧筆を扱っておられる業界、水産加工を扱っておられる業界、それぞれが自分たちはどうなるんだいということを思っておられるわけで、4,318品目あるわけですから、北海道から九州、沖縄まで、できるだけきめ細かい形で、そういうふうにして、小さな事業所さんも多くあるわけです。自分たちはどうなるんだというようなことが適切に御理解をいただける、そしてまた資金繰り等々、本当に最もふさわしい支援ができるという体制を今、構築をしておるところでございまして、また、メディアの方々におかれましても、こういう業界が困っているよというようなことをお知らせいただけますと、私どもがより適切に対応できるかなというふうに思っておるところでございます。
80年がたちました、広島からも長崎からも。そういたしますと、私どもが昭和51年、国連に提出した資料がございます。それは、死没者の方々の数について昭和51年に国連に提出した資料がございますが、これが昭和51年ですから、31年たった時期でございますね。今、80年ということであります。被爆者の方々の数も減少しておりまして、昭和51年に出しました数字よりもより精緻な実態が把握できるかどうか、これは極めて難しいかというふうに思っております。時間がそれだけたっておりますので。ですが、その数をこれ以上正確に把握するという努力は、これはなかなか、一生懸命いたしますが、難しいということは御認識いただけるかと思っております。今日申し上げたことですが、時間の経過とともに記憶は風化していくわけで、そして、体験された方、被爆者の方、体験者の方は減少していかれるわけで、そういうようなことを考えたときに、その記憶を伝承する努力というのは、今までよりも更に更にエネルギーをかけていかなければいけないというふうに考えておるところでございます。この長崎におきましても、デジタル技術を使った体験型展示というものを導入するという御要望も頂いておりまして、政府として、より多くの人々に、より多くの地域の方々に、国外も含めまして、この体験というものを、実相というものを伝える努力を更にしていかねばならないという思いを新たにしたところでございます。以上です。
(司会者)
ありがとうございました。以上をもちまして、総理の記者会見を終了させていただきます。