広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式参列等についての会見
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(司会者)
それでは、ただ今から、石破内閣総理大臣の記者会見を始めさせていただきます。では、初めに、広島市市政記者クラブから代表質問をお願いします。
(記者)
中国新聞の和田と言います。よろしくお願いいたします。まず、日本の核政策についてお伺いします。さきの参院選では、日本の核武装・核共有に言及する候補者がいました。総理御自身も、就任前に寄稿文で核共有や核の持込みの検討の必要性を唱えられています。非核三原則の見直しにも関わる問題だと考えますが、日本の核武装や核共有について、総理の御見解をお伺いします。あわせて、核兵器廃絶に具体的にどう取り組むかもお聞かせください。
(石破総理)
一問一答でよろしいですか。
(司会者)
はい。お願いします。
(石破総理)
国の安全保障の在り方、それにつきまして、様々な国民的な議論があり得るというのは当然のことでございます。政府として、非核三原則を政策上の方針として堅持をしておりまして、これを見直すような考え方はございません。その上で申し上げますれば、私が従来、核共有の文脈で述べてまいりましたことは、非核三原則を堅持した上で、米国の拡大抑止に係る意思決定のプロセスについて、米国と意思疎通を行うことの重要性ということでございます。これは、防衛庁長官のときからアメリカの国務長官あるいは国防長官との間でも議論をいたしてきたことでございます。
つまり、私どもとして、核兵器を持つつもりも全くございません。「持たず、作らず、持ち込ませず」ということでございます。周りが核保有国に取り囲まれている我が国でございます。そうしますと、懲罰的抑止力あるいは報復的抑止力と申しますが、それを我が国は有しておりません。抑止力には、懲罰的・報復的抑止力と、拒否的抑止力と、この二つのカテゴリーがございますが、私どもとして、拒否的抑止力の向上には努力をいたしてまいりますし、それを更に高めていかねばならないと思っておりますが、報復的抑止力あるいは懲罰的抑止力と世上、言われておりますものにつきまして、意思疎通を行うということは、現時点において極めて重要なことだと認識をいたしております。核抑止力を含む米国の拡大抑止の信頼性、これを強化していくという方策につきましては、不断に検討が必要であると考えております。
同時に、「核兵器のない世界」という目標に向かって努力をしていくことと、これは矛盾をすることではございません。それは矛盾する概念だというふうに私は考えておりません。究極的に「核兵器のない社会」の実現ということを目指すことに何ら変わりはないものでございます。そういう意味におきまして、核兵器国と非核兵器保有国、これが広く参加をする「核兵器のない世界」に向けた唯一の枠組みでございます。これはNPT(核兵器不拡散条約)の体制でございまして、「ヒロシマ・アクション・プラン」に基づき、現実的な実践的な取組というものをしてまいりたいと、このように考えておるところでございます。
核共有というのは、その言葉が何か、所有権を持つとかそういうふうに誤解をしておられる向きもございますが、それは非核三原則との関係で、そのようなことを全く考えておるわけではございません。NATO(北大西洋条約機構)における核兵器保有国は、アメリカ、イギリス、フランス、3か国だけでございます。そうでない国々が、どのようにしてリスクを共有をするかということについて議論がなされておるものと承知をいたしておるところでございます。以上です。
(司会者)
それでは、次の質問をお願いします。
(記者)
2問目を伺います。原爆被害者への国家補償についてです。ノーベル平和賞を受賞した日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)は、戦争を始めた国の責任として、死没者を含む原爆被害者への国家補償を求めてきました。被爆・戦後80年で、被害者も高齢化しています。政府として、原爆被害者や空襲被害者などへの国家補償を検討する考えはありますでしょうか、理由と併せて見解をお聞かせください。
(石破総理)
繰り返しの答弁はいたしません。昨年、ノーベル平和賞を、日本原水爆被害者団体協議会が、ノーベル平和賞を受賞されたこと、これは先ほどの追悼の辞で申し上げましたように、極めて意義深いことだというふうに思い、敬意を表する次第でございます。さきの大戦において、全ての国民が何らかの戦争の犠牲というものは被っておるものでございまして、一般市民の中にも、筆舌に尽くし難い労苦を体験された方々が大勢おられるというものでございます。広島・長崎において多くの被害が生じたということにつきましては、80年をたった今日におきましても、なお重く受け止めねばならないというふうに認識をいたしております。
被爆者の方々に対しましては、原子爆弾の放射能による健康被害がほかの戦争被害とは異なる特殊の被害であるということでございます。ほかの被害ももちろん筆舌に尽くし難い悲惨なものでございましたが、原子爆弾の放射能による健康被害がほかの悲惨な戦争被害とは異なる特殊な被害であることに鑑みまして、被爆者援護法に基づき、保健・医療・福祉にわたる総合的な援護対策を講じてきたところでございます。今後とも、現行法の考え方を踏まえまして、高齢化が進んでおられる被爆者の方々に寄り添い、援護に努めていきたいと、このように考えております。
空襲被害者を含む一般の戦災者の方々につきまして、政府といたしまして、これまで一般の社会保障施策の充実を図る中でその福祉の向上に努めてまいりました。一般戦災死没者の追悼の観点から、全国の空襲に関する情報の整理・発信を行ってきたところでございます。私自身、全国あちらこちらに参りますときに、そこでどのような空襲被害があったかということは、必ず詳細に、自分なりに調べて、その場に臨んでおるものでございます。現在、超党派の議員連盟におきまして、空襲被害者の方々に対します一時金の支給、実態調査などを内容とする議員立法について、議論がなされておるところでございます。引き続き、その動向というものにも着目をしながら、政府として対応してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
(司会者)
時間となっておりますので、市政記者クラブの質問は終了させていただきます。続きまして、内閣記者会の方から質問をお願いします。
(記者)
毎日新聞の野間口と申します。内閣記者会を代表して2問質問いたします。1問目ですが、戦後80年についてです。広島における惨禍を目の当たりにした人々が減少する中で、被爆の記憶を継承することが重要となりますが、式典に出席された総理の受け止めをお聞かせください。また、総理は、かねてから戦後80年の節目に検討されていた閣議決定による首相談話の発表を見送り、首相個人としての見解を示す方向で調整との報道があります。4日の衆議院予算委員会では、首相見解の発出について、「形式はともかく、戦争を2度と起こさないための発出は必要だ」と答弁されました。発出時期に関しては、今月の15日の終戦の日は見解を示さず、日本が降伏文書に調印した9月2日など複数の機会を視野に表明を検討する見方もありますが、今後の対応や総理の思いをお聞かせください。
(石破総理)
以上ですか。
(記者)
1問目は以上です。
(石破総理)
形式というものについてはよく考えたいと思っております。国会で昨日、一昨日もお答えをしたとおりでございます。時期につきましては、どの時期が最も適当なのかということをよく考えてまいりたいと思っております。国会答弁で申し上げましたが、50年、60年、70年談話というのは、それぞれ深い考えの下に積み重ねられてきた、そういうような意味を持つものだと思っております。同時に、2度と戦争を起こさないというために、これも国会答弁で申し上げたことでございますが、田中角栄元総理が仰っておられた、実際に日中戦争に従軍された元総理が仰っておられた、「あの戦争に行った人が日本の中心にいる間は日本は大丈夫だ」と、「それがいなくなったときが恐ろしいのだ」と、「だからよく勉強せねばならんのだ」というふうに仰っておられました。今年が敗戦から80年を迎えます。15歳で少年兵で従軍された方が齢(よわい)95ということに相なるわけで、もちろん御健在、御健勝、御活躍の方も大勢いらっしゃいますが、その数は本当に年々少なくなっておることも事実であります。本当に「よく勉強してもらわねばならんのだ」という言葉をよくかみしめながら、どうすれば戦争が起こらないのかということを、50年談話、60年談話、70年談話を踏まえました上で、私として考えてまいりたいと思っておるところでございます。歴史認識とかそういうようなことは、貴重な積み重ねがございます。今、必要なのは、どうすれば2度と戦争を起こさないという、ある意味、そういうような仕組みと申しましょうか、ポリティコ・ミリタリーの仕組みと言いましょうか、そういうものについて、談話を踏まえた上で、その問題提起というものも受け止めながら考えてみたいと、このように思っておるところでございます。
また、本日の感想といいますか、感想という言葉は軽くていけないのですが、それは、最後に引用いたしましたあの歌に全て尽くされていると私は思っております。「そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」というのは、その光景というものを想起しただけで、本当にどれほど悲惨なことであり、どれほどの悲しい思い、辛い思いがそこにあったかということであります。時間とともにいろいろな記憶が風化するというのは、それは避け難いことでございますが、そうであるだけに、能動的にその記憶というものを継承する努力というものは更に深めていかねばならない、強めていかねばならないと、このように考えておるところでございます。
(司会者)
それでは、次の質問をお願いします。
(記者)
2問目ですが、内政について伺います。参院選の大敗を受け、自民党内から要求があったことを踏まえて、自民党執行部は、両院議員総会を8日に開催することを決めました。総理は、決して政治空白を生むことがないよう責任を果たしていきたいと続投の意向を表明されていますが、党内からは総理の退陣や総裁選の前倒しの実施を求める声が強まっています。どのような姿勢で両院議員総会に臨まれるのか、また、御自身の責任の在り方や進退についての考えも含めお考えをお聞かせください。
(石破総理)
昨日、オンラインではございましたが、全国幹事長・政調会長会議というものも開催をいたしました。いろいろな公務の関係で全部を聞くことはできませんでしたが、その報告は詳細に受けておるところでございます。我が党というのは国民政党であり、北海道から九州、沖縄まで、多くの党員の方々あるいは支持者の方々によって成り立ち、運営をしてまいっておるものでございます。多くのお声に真摯、率直に耳を傾けていかねばならないというのは当然のことだと思っております。
また、予算委員会でもお答えをいたしましたが、この関税についてのいろいろな議論がございました。これは合意という形になっております。担当大臣が今、訪米をいたしておりまして、これも国会答弁の中で申し上げたことでございますが、合意よりも実行に移すことの方がはるかに難しいということは、かつて日米交渉に携わったアメリカの政府関係者が述べておるとおりでございます。また、本日もこれから、そういうような方々から御意見を承るようにいたしておりますが、全国4,318関連の輸出品目が、対米に限ってございますが、ございます。そういう方々に対して、不安がないようにしていくということも、政府として当然の務めでございます。そういうことについて、なおなお、多くの方々が不安の中におられるということに対して、実行に移す過程におきまして、日米間で、本当に日本の国益というものを守りながら、きちんとした実行に移していく。同時に、国内の体制においていろいろな不安をお持ちの方々に的確にお答えをしていくということは極めて政府として重要なことだと思っております。そのような課題というものに、政府として適切に、迅速に、的確に対応するということを考えておるところでございます。
(司会者)
時間となっておりますので、内閣記者会からの代表質問はこれで終了させていただきます。それでは、以上をもちまして、石破内閣総理大臣の記者会見を終了いたします。ありがとうございました。
(石破総理)
ありがとうございました。