ベトナム及びフィリピン訪問等についての会見
(外政面でまず1点、今回のベトナム、フィリピンの訪問では、経済と安全保障の両面での連携の深化に注目が集まり、経済面では、両国の首相との間で、米国の関税措置の影響などをめぐって議論が交わされたが、一連の首相間の対話で、どのような成果を得られたか、関連して、石破総理はこれまで、ASEAN(東南アジア諸国連合)との連携は極めて重要との考えを示してきたが、今後、ASEANとの関係を更に深める上で、今回の訪問はどのような意義があったか、安全保障面では、ベトナム、フィリピン双方との間で協力の強化を確認し、南シナ海で中国が軍事活動を活発化させる一方、アメリカのトランプ政権が東南アジアへの関与を弱めることへの懸念も根強くあるが、そうした中で、今回の両国との連携強化をどのように位置付けて取り組んでいくか、また、関税をめぐっては、赤澤経済再生担当大臣が、本日、再訪米し、2回目の関税交渉に臨むが、赤澤大臣にはどういった指示をしたか、また、今回の交渉に何を望み、どういった成果を期待するか、さらに、関連して、トランプ政権が、この度、自動車部品に課す関税の軽減措置について新たな発表をしたことへの見解について)
お待たせいたしました。本年は、第二次世界大戦、太平洋戦争、これが終わってから80年という節目の年であります。同時に、ベトナム戦争が終わって50年という年になります。そういうような年でありますが、ベトナム、フィリピン、両国を訪問して、これまで両国、東南アジア諸国との関係を改めて振り返るということが一つございました。そういうような思いもあって、本日、慰霊碑を参拝したということもございます。いろんな歴史について、我々は忘れているけれど、向こうは忘れていないということも間違いなくあるはずなので、過去を振り返るとともに、これから先未来に向かって、どうやってベトナム、あるいはフィリピンと協力をしていくかということについて議論し、確認し、そしてそれを発展させると、そういう目的で今回訪問したものでございます。
あえて総括をすれば、三つに集約されようかと思っております。1点は、首脳同士の個人的な関係の構築であります。ベトナムにおきましては、トー・ラム書記長、あるいはチン総理を始め、集団指導体制でございますので、4名の方々と相当に長い時間、議論をいたしました。特に、チン首相とは、会談、そして夕食会、そして朝食会と、中身について言及はいたしませんが、随分と突っ込んだ深い議論ができたと思っております。そしてまた昨日は、マルコス大統領。これも随分と長い時間お話もいたしました。本音で話ができたと思っております。いつも申し上げることですが、もう1回会いたいと、また議論をしたいという関係を築くのはとても大事なことだと思っております。そういうような関係を築けたと思っておりますし、奇(く)しくもというべきか、ベトナムの4人の指導者、そしてマルコス大統領、皆同じ年代でございます。1957年生まれ、58年生まれということで、同じ時代を生きてきました。ベトナム戦争の終結というものも、私はテレビで見て大きな衝撃を受けたのですけれども、同じ時代を生き、同じ時代のことを語り、未来を語るということは極めて重要なことだと思っております。そういう意味で、大変に信頼関係の構築ということで意義がございました。
2点目は、安全保障においての協力の強化でございます。力による一方的な現状変更の試みということが、南シナ海、東シナ海で行われているということでございまして、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」、これを実現するためにどうするかということであります。具体的には、ACSA(物品役務相互提供協定)、RAA(部隊間協力円滑化協定)、情報保護、OSA(政府安全保障能力強化支援)、そういった部門で具体的な協力関係を更に進めてまいりたい、具体化してまいりたいと考えております。本日は、先ほどまで「ぶんご」(掃海母艦)、「えたじま」(掃海艦)におきまして、海上自衛隊のいろいろなオペレーションについての説明を受け、今後の展開についても話を聞いたところでございました。その前は、海上保安庁の皆さん方がフィリピン沿岸警備隊の方々に対するいろいろな訓練指導を行っておりましたし、あの船自体、日本の船というものをこちらに出しているというものでございます。私どもは、そういうようなコーストガード同士、あるいは海上自衛隊と海軍、そういうような協力を密にすることによって、この地域における平和と安定、法の支配、これを強固なものにしたいと思っております。実に有意義なことでございました、これが2点目。
3点目は、アメリカの関税措置を踏まえた対応でございます。アメリカの関税措置、中国の報復措置、こういうようなものの応酬が、世界経済・多角的貿易体制に与える影響は甚大なものがございます。この東南アジアは世界の成長センターでもございますので、そこにおいて、それぞれの諸国がどのような考え方を持っているか、国によって違いますのでね、ベトナムはベトナム、フィリピンはフィリピンの考え方があります。また、私どもは、経産省を中心に全国1,000か所、相談窓口というのを作っておるわけでございますが、海外における日本企業もこのトランプ関税の影響を多かれ少なかれ受けるのであって、海外に展開する企業さんが、どのような影響を受けるか、どのような懸念を持っているか、どういうような対応を望んでおられるかということについて、聞かせていただくということは極めて有意義なことでございましたし、これを更に充実してまいりたいと考えております。産業の高度化、強靱化(きょうじんか)のために、半導体、脱炭素、エネルギー、新たな分野の協力というものを、これから先、ベトナムともフィリピンとも更に強く行ってまいるものでございます。
また、万博のお願いということは、ベトナムにおきましても、フィリピンにおきましても、随分といたしました。マルコス大統領は、1970年、14歳の時に、万博の開会式に行ったんだよというお話を随分うれしそうにしておられましたが、また来てくださいね、というお願いもいたしたところであります。この(大阪・)関西万博の成功というのは、これはもう本当に、与野党問わず、政府を挙げて、そして政界を挙げて、経済界を挙げて、また皆様方のお力も賜りたいと思っております。
赤澤大臣につきましては、まだこれは、現在、会談というものに向けていろいろな作業をいたしておるところでございます。いずれにいたしましても、アメリカがどのような対応をするのかということ、我々の基本姿勢は全く変わるものではございません。合衆国のあの関税措置というものは撤廃を求めていくということでございますが、アメリカ側にも具体的にいろんな要求が、いろいろ報道にいろいろ出ておりますが、それが具体的にどのようなものなのかということは確認ができておらないものもたくさんございます。そういう点について、よく聴取をし、いつも申し上げておりますように、どっちかが得をしてどっちか損するということではございません。共に力を合わせて、雇用創出をし、そして世界に向けて、それぞれの役割を共にハーモナイズさせながらやっていくということの重要性を、赤澤大臣はきちんと向こうに申し述べるということだと承知をいたしております。
(内政について、(4月)26日の街頭演説で公明党の斉藤代表が「7月に打たれるであろう経済対策に、しっかり関税対策を盛り込みたい」と発言し、記者団には、「与党として、経済対策を打つべきという、大まかな方向性の合意は得られているものと思う」と述べたが、公明党からのこうした発言をどう受け止めているか、また、経済対策の検討の必要性についてどう考えているか、さらに、立憲民主党は、食料品の消費税率を原則1年に限って0(ゼロ)に引き下げる案を参議院選挙の公約に盛り込むことにしているが、参議院選挙をにらみ、野党の多くが消費税減税を主張しているところ、改めて、消費税減税についてどう考えているか)
今日が4月の30日でございます。いつも申し上げることですが、令和6年度補正予算、あるいは令和7年度本予算、これを現在、執行を始めたところでございます。なるべく早く国民の皆様方にお届けをできるようにということでやっておるところでございます。したがいまして、今の時点において、新たな経済対策を考えているわけではございませんが、今般、与党の御提言を踏まえまして取りまとめた「米国関税措置を受けた緊急対応パッケージ」、この施策を着実に執行し、的確にお届けするということで、必要な支援に万全を期してまいります。
また、消費税のことについて、これは具体に、よく詳細に検討してみなければなりませんし、これは、共に与党を構成をする、友党・公明党の御発言ですので、よく精査をし、また議論をさせていただきたいと考えております。これは、伝え聞くところというか、拝読をするところによれば、例えば、物価対策として、食料品、この消費税の減税を行うということでございます。これもよく言われることでございますが、高所得の方、あるいは高額消費、これも含めて負担軽減がなされることになります。これは「売上税」と言っておった頃、もう今から40年近く前からずっと議論されておることでございますが、高所得の方、あるいは高額消費、これも含めて負担が軽減されることになりますので、低所得の方が物価高に一番苦しんでおられるということから考えればどうなんだろうね、ということについて、これはよく検討が必要だと思っております。また、もし仮に1年間の限定ということになると、1年の間に、下げて、また上げてということになるわけでございますが、事業者の方々がごく短い間に2回のシステム変更ということが本当に可能か、事務の負担はどうなのか、という問題がございます。そういう点がありますことを踏まえまして、与党・公明党のお話をどのように我々が理解をすべきなのかということであります。私どもとして、やはり物価高を上回る賃金上昇ということをずっと申し上げてまいりました。そしてまた、燃料についても、あるいはコメについても、これの消費者の皆様方の感じが、本当に下がったねというふうに実感していただけるように、そういうような対策と賃金上昇、もちろん賃金上昇のメリットを受けられない方々がおられることもよく承知の上で申し上げているのですが、そういう対策をきちんと講じるということがまずは大事だというふうに考えておるところでございます。